キイロショウジョウバエに対する短波長可視光(青色光)の殺虫効果では、成虫に対する効果的波長、有効光強度を調査した。その結果、465nmが最も効果が高く、次いで417、439nmの効果が高いことが分かった。455nmの効果は前後の波長に比べて著しく低かった。465、439nmの効果が高く、455nmの効果が低いという結果は、蛹に対する結果と類似していた。昨年度の成果で、幼虫と蛹では効果的波長が異なることが明らかになっていたので、蛹について、さらに発育ステージによる効果的波長の変化を調査した。その結果、蛹化初期の発育ステージ(P2期~P4期)ですでに、効果的波長が成虫と類似することが明らかになった。 チカイエカについては、成虫に対する417nm光の殺虫効果を調査した。その結果、雌雄ともに417nm光の照射により成虫寿命が大きく短縮した。雄では無照射の3分の1程度、雌では4分の1程度の寿命となった。このことから、チカイエカにおいても、卵、蛹、成虫で青色光が殺虫効果をもつことが明らかになった。 キイロショウジョウバエ蛹を用いて、照射強度・照射時間と殺虫効果の関係を調査した結果、殺虫効果を得るには、照射強度と照射時間がともにある一定以上であることが必要なことが分かった。また、間断照射の場合は連続照射と総照射時間が同じでも、一定以上の光強度がないと効果が著しく低くなることも分かった。 ショウジョウバエ囲蛹殻の光透過スペクトルと効果的波長との間には特に関係性がないことも明らかになった。すなわち、種特異的な効果的波長は、光が表皮を透過した後の吸収に起因するものと考えられた。また、ショウジョウバエ蛹の解剖学的調査により、照射を受けた蛹が受ける損傷は部位や組織により異なることも明らかになった。 研究期間全体を通じ、青色光殺虫について、実用化を目指す上で必要な多くの基礎的知見を得ることができた。
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