共生細菌ボルバキアが誘導する、宿主のRNAウイルス抵抗性上昇に関わる宿主のタンパク質の同定を目指した。ボルバキアが感染し、サイズの大きな細胞である雌生殖細胞にてボルバキアと共局在する宿主タンパク質を探索したところ、複数のRNA結合タンパク質を同定した。キイロショウジョウバエのボルバキアを近縁種のオナジショウジョウバエに移植した系統では、ボルバキアが異常増殖し雌生殖細胞の発生に異常が見られる。この異常は、ボルバキアと共局在するRNA結合タンパク質の機能低下によって引き起こされる異常と酷似している。そのことから、ボルバキアはこれらRNA結合タンパク質の機能を低下させ、それによりRNAウイルスの増殖が抑制されているという仮説を立て、以下の実験を行った。 ボルバキアと共局在するRNA結合タンパク質でRNAウイルスの増殖に関わるものを探索した。その結果、me31B遺伝子をRNAiによりノックダウンしたショウジョウバエ個体において、RNAウイルスの増殖が抑制されることが分かった。また、me31B遺伝子の変異体においても同様の結果を得た。生化学的な実験により、Me31BはウイルスのゲノムRNAと結合していることがわかった。また、ボルバキア感染個体に置いてMe31Bの量を増加させると、RNAウイルスの増殖が亢進する事が分かった。以上のことから、ボルバキアはMe31Bの機能を低下させることによりRNAウイルスの増殖を抑制している可能性が考えられた。
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