研究課題/領域番号 |
25660266
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
辻 瑞樹 琉球大学, 農学部, 教授 (20222135)
|
研究分担者 |
山根 正氣 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (30145453)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 昆虫 / 環境 / 総合的害虫管理 / 熱帯農学 / 生物多様性 |
研究概要 |
アブラヤシの生産拡大は近年における熱帯林とそこでの生物多様性の減少の大きな要因とされるが、本研究ではアブラヤシ上に素数の巣を構築するという奇妙な習性を持つと見られるアジアツムギアリを害虫防除資材(在来捕食者)として用い、低コスト生産と環境保全を両立の可能性を科学的に探究することを目的とする。初年度は、他の系では困難なアリ類における厳密な野外個体群動態の世界初のデータ収集を行うための予備研究を、ジョホールバルのマラヤ大学のアブラヤシ試験農場で実施した。巣内のコンテンツ(巣当たりの各カーストおよび各成長ステージに属するアリの個体数)と巣の大きさおよび地上からの位置との間の関係性を知るため巣のサンプリングを行った。これらは攻撃的なアリの行動を詳しく観察し、アリが巣外活動をほとんど行わずかつ攻撃性の低い深夜に行うことで達成できた。その結果、興味深いことにアブラヤシに存在する本種の巣においては巣の大きさ示す指数(巣の径や巣を構成する小葉数)と巣内のコンテンツには統計学的に有意な相関が一切見られなかった。また、過去の研究が示すように、巣は成長ステージを含むブルード巣とそれを含まないバラック巣に峻別できた。しかし巣の大きさなどの外見ではやはり、これらを区別することはできなかった。よって今後開始予定の個体群動態の調査では、巣の大きさは考慮せず数のみカウントするのが労力節約の点で賢明であることが示された。またピットフォールトラップによるアリ群集多様性の調査も現地で予備調査を行った。これらの情報をもとに、樹木当たりの巣数と個体群密度および群集動態の調査と背後にある機構を明らかにしていくための方法論を現地協力者と詳しく議論した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
熱帯のフィールドでの調査研究が中心だが、極めて攻撃的なこのアリの調査を行うにあたって、調査時の苦痛(アリに噛まれることの対策と熱さ対策の両立)の軽減がとくに現地のスタッフの協力を得る上で必須であることが判明した。研究代表者や分担者がよしとする程度の苦痛を現地スタッフは受け入れられないのである。そのため現地のスタッフと持続可能な現実的方法を議論し合意に達するのには個体群動態の調査だけでもかなりの時間を要した。また、他の項目の研究に関しても信頼性の高いデータを現地のスタッフの協力で得るためには、正確なコミュニケーションと、方法論や目的に関する高度合意が必要で、それにはさらなる工夫が必要であると痛感させられた。
|
今後の研究の推進方策 |
上記のような理由から、慎重を喫し、来年度も暫くはデータ収集の方法を現地で議論し詰める予定である。最も重要なのは研究目的の学問的意義に関する理解の共有であるが、害虫防除に直接繋がらない項目に関しては突っ込んだ議論が少し必要である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
使用額は概ね計画どおりである。差は海外調査を伴う課題ゆえの為替の変動等で生じた比率としてはわずかなものである。 次年度使用額は生じたが全体に比して小額なので、来年度も概ね当初の計画どおり行う。
|