研究実績の概要 |
本研究で供試した根部エンドファイトVeronaeopsis simplexは現在までに分離源の異なる3菌株(CBS 588.66, Y34およびIBA K45) が報告されている。基準株であるCBS 588.66は,南アフリカでAcacia karooのリターから分離されている.また,Y34およびIBA K45は当研究室において,それぞれ屋久島および茨城の雑木林土壌から釣餌法によりトマト苗から分離されており,根部エンドファイトとして植物の生育促進効果を示すことも明らかとなっている.これら日本分離株に関しては菌糸内にバクテリアの存在が示唆されているが,同定には至っていない(Khastini, 2013).そこで本年度は,V. simplexと内生バクテリアの相互作用を明らかにするために,V. simplex3菌株を供試して,内生バクテリアの検出および系統解析を行った.それぞれの菌株を2週間培養後,DNA抽出を行い,バクテリアのユニバーサルプライマー10F-907Rを用いてPCR増幅を行った.その後,クローンライブラリー解析に供し,内生バクテリアの同定を行った.さらに蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH)により内生バクテリアの観察を行った.クローンライブラリー解析の結果,V. simplex3菌株から共通してRhizobium属細菌が検出され,顕微鏡観察においても菌糸内にバクテリア様構造物を確認した.また,検出されたRhizobium属細菌に関して,16S rDNA塩基配列に基づく系統樹を構築した結果,検出されたRhizobium属細菌はPiriformospora indicaの内生バクテリアとして報告されたRhizobium radiobacterに近縁であった.
|