研究課題/領域番号 |
25660275
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
児玉 浩明 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 教授 (70302536)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ネコブセンチュウ / コンポスト |
研究概要 |
ネコブセンチュウは、農家にとって非常に防除に苦労している代表的な害虫である。薬剤による土壌消毒は、人体への負荷が大きいため、土壌消毒によらないネコブセンチュウの防除方法が望まれている。研究代表者は未利用海産資源を好熱菌によって発酵させたコンポストを投与すると得られる作物の硝酸含量が低下する仕組みについて研究を進め、その原因がコンポストによる土壌に含まれる硝酸の脱窒作用によることを明らかにしている。このコンポストを利用している農家からは低硝酸化に加えて、ネコブセンチュウの被害が軽減することが報告されている。本研究では、このコンポストに実際にネコブセンチュウの被害を軽減するような働きがあるのかどうかを実験により明らかにすることを目的としている。26年度の研究では、ネコブセンチュウを多く含む土壌にコンポストを加えてトマトを栽培したところ、加えていない実験区に比較して成長が促進されることを確認した。ただし、ネコブセンチュウを多く含む土壌による実験では、試験ごとに結果が安定しなかったため、ネコブセンチュウを単離し、一定数のネコブセンチュウを感染させる方法に実験方法を変更することになった。そのため、ベルマン法によるネコブセンチュウの単離方法などを検討し、単離技術を確立した。一方、ネコブセンチュウへの植物の耐性能力の向上は、コンポスト由来のバクテリアが植物内部に寄生し、その植物内生菌が抗ネコブセンチュウ作用をもたらしていることも考えられる。実際にコンポストを処理したキュウリから単離したPaenibacillus属バクテリアを、キュウリに感染させたところ、植物の生長が促進する効果が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)抗ネコブセンチュウ活性を調べるための実験系作成:農家の協力によりネコブセンチュウ被害激発土壌にコンポストを添加してトマト栽培試験を行った。結果、コンポストを加えた実験区では成長促進が観察されたが、対象区での根こぶの形成が観察されなかった。根こぶの形成が不安定な理由として、土壌に含まれるネコブセンチュウの数が安定していないことが原因ではないかと考えられたため、ネコブセンチュウを土壌から単離し、一定数、植物に感染させる方法を検討した。そのために、ベルマン法によるネコブセンチュウ単離、計測方法、感染方法などを検討し、一連の技術の確立を行った。このように実験方法の変更を行ったため、当初予定よりも研究がやや遅れることになった。 (2)根こぶ形成に関わる16D10遺伝子の作用:16D10ペプチドは、ネコブセンチュウが植物に注入するペプチドである。このペプチドが植物細胞に作用すると植物側の遺伝子発現が変化し、結果としてネコブセンチュウの感染を助ける働きがあると考えられている。コンポストによって16D10による植物側の遺伝子発現応答が変化することもあり得る、と考えられため、16D10発現コンストラクトを現在作成しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
(1)単離ネコブセンチュウを用いた、抗ネコブセンチュウ活性の測定:ネコブセンチュウを単離できるようになり、トマト、キュウリ、タバコ等へ感染および根こぶの形成を誘導する。その過程でコンポストの影響を評価する。 (2)単離植物内生菌の再感染試験:単離されたPaenibacillus属バクテリアを感染させたキュウリやトマトを用いて、抗ネコブセンチュウ活性が得られるかどうか調べる。 (3)16D10遺伝子による植物遺伝子発現の変化に与えるコンポストの影響:16D10遺伝子を発現する形質転換植物をコンポストを含む土壌で栽培し、対象区と遺伝子発現の変化について調べる。以上の研究からコンポストに抗ネコブセンチュウ活性があるのか、またあるとした場合にその仕組みについての一端を明らかにしたい。
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