ネコブセンチュウは、農家にとって非情に防除に苦労している代表的な害虫である。薬剤による土壌消毒は、人体への負荷が大きいため、土壌消毒によらないネコブセンチュウの防除方法が望まれている。未利用海産資源を好熱菌によって発酵させたコンポストを施肥した農家からはネコブセンチュウ被害が減少すると報告されている。そこで、25年度ではネコブセンチュウ汚染土壌にコンポストを混合して植物を栽培したところ、コンポストによって植物の成長が促進することが観察された。さらに、26年度では土壌からネコブセンチュウを回収し、植物に感染させる実験を行った。ネコブセンチュウをトマトの根元に散布し、その後、50日間植物を栽培した。3回の実験をおこなたところ、いずれの実験においても、コンポストの抽出液を散布した実験区ではネコブの形成が抑制されていた。この結果は実験室内においてコンポストによるネコブセンチュウ被害の軽減が再現できたことを示していると考えられる。一方、コンポスト自体にはネコブセンチュウを殺す、もしくはネコブセンチュウの活動を抑制するような働きは観察されなかったことから、コンポストの施肥によるネコブセンチュウの被害軽減作用は、コンポストがネコブセンチュウに直接作用するのではなく、コンポストが植物に作用して植物の抗ネコブセンチュウ活性が高まったことが原因ではないかと考えられた。そこで、コンポスト抽出液を塗布したキュウリ子葉から植物内生菌を単離したところ、Paenibacillus属バクテリアが再現性良く単離された。Paenibacillus属バクテリアには、抗ネコブセンチュウ活性をもたらす菌含まれることが報告されている。今後、このPaenibacillus属バクテリアがコンポスト散布による抗ネコブセンチュウ作用に関与しているのかどうか、調べていく必要がある。
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