本研究では、無酸素処理による苗の無農薬害虫防除法に資するために、無酸素処理時間が害虫および苗の生存率におよぼす影響を把握し、苗の生育を阻害することなく害虫を死に至らしめる(防除する)方法を明らかにすることを目指した。ここでは、2種類のハダニ(波ハダニおよびカンザワハダニ)の休眠および非休眠雌成虫を用いて実験し、生存率を求めた。さらに、卵についても無酸素処理をして、孵化率を求めた。 平成25年度では、ナミハダニ雌成虫の生存率および卵の孵化率におよぼす無酸素処理の影響を調べた。無酸素処理を12時間以上とした場合、ナミハダニ雌成虫の生存率は0%となり、また、卵の孵化率も0%であった。ただし、雌成虫は休眠する(越冬状態に入る)と、無酸素処理時間を24時間とした場合でも、生存率は0%とはならなかった。これらを総合的に判断すると、ナミハダニの無酸素処理による防除のためには、12時間以上の無酸素処理時間を与えるか、休眠状態の雌成虫が苗に付着している場合には、一旦それを打破した上で12時間以上の無酸素処理時間を与える必要があると判断された。なお、カンザワハダニにおいても同様の結果が得られている。 平成26年度では、インゲン苗およびイチゴ苗に無酸素処理を実施して、悪影響が見られないかを確認した。その結果、両者ともに与えた条件下すべてで葉にダメージが認められた。ただし、新たに展開する葉には、悪影響は認められなかった。今後、葉にダメージを与えることなく、または、それを軽減するような手法を開発すれば、無酸素処理による苗の無農薬害虫防除法が確立できるのではないかと考えた。
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