研究課題/領域番号 |
25660279
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
坂 志朗 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (50205697)
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研究分担者 |
南 英治 京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (00649204)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオマス / バイオ軽油 / 油脂 / 超(亜)臨界流体技術 |
研究概要 |
水素雰囲気下、無触媒亜臨界水処理(270℃、11.5MPa、油脂:水=体積比1:1)にて1時間ナタネ油を加水分解し、約90 wt%の脂肪酸が得られたが、水素添加は進行しなかった。一方、Pd/C触媒(油脂に対し5wt%)を用いた場合、加水分解反応は40分で平衡に達し、10分以内に不飽和脂肪酸への水素添加が完了した。その結果、飽和脂肪酸のステアリン酸とパルミチン酸(モル比;94.1:5.9、油脂ベース収率78.5wt%)と副産物としてのグリセリン及びグリセリド中間体が得られた。これらの飽和脂肪酸は、水素雰囲気、Pd/C触媒(油脂に対し50wt%)存在下脱炭酸反応(300℃、2.0MPa、2時間)により、直鎖飽和炭化水素のn-ヘプタデカン及びn-ペンタデカン(モル比91.7:6.1、油脂ベース収率76.7wt%)へと変換された。以上のことより、本研究で提案したプロセス(亜臨界水下での水素添加・脱炭酸処理)によって、ナタネ油からバイオ軽油が製造されることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原料油脂ナタネ油を用い超臨界水による加水分解で種々の脂肪酸及びグリセリンを副産物として得ることができ、その最適処理条件を明らかにした。得られた種々脂肪酸の水素添加と脱炭酸処理をも完成させ、バイオ軽油相当量製造の最適処理条件を明らかにした。副産物としてのグリセリンの中性エステル(炭素ジアルキル)との反応についても検討を加え、有価物としてグリセロールカーボネートが得られることを明らかにした。得られたバイオ軽油について、その燃料特性について現在評価を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、25年度に得られたナタネ油からの成果をもとに、油脂資源を替えて25年度と同様の研究を行う。 1) 原料油脂 : 原料油脂として、現在バイオディーゼル原料として世界的に注目されているナンヨウアブラギリ(Jatropha curcas)の実より抽出したクルカス油など種々の樹木からの油脂類や廃油を実験に供する。クルカス油などの抽出にはヘキサン抽出を行う。得られたそれぞれの油脂に対し、その収率、化学組成(トリグリセリド及び遊離脂肪酸)、油脂以外の不純物の比較を行う。 2) 超(亜)臨界水を用いた油脂の加水分解 : クルカス油や廃油などの油脂類を用いて実験を行う。すなわち、平成25年度に明らかにした最適処理条件で超臨界水を用い、効率的に加水分解する。得られた種々の脂肪酸及び副産物としてグリセリンを得る。 3) 種々脂肪酸の水素添加と脱炭酸処理 : 上記の加水分解で得られた種々の脂肪酸を炭化水素の溶媒中で平成25年度に明らかにした最適処理条件(溶媒種、脂肪酸とのモル比、水素添加比及び脱炭酸触媒と添加量)にて水素添加及び脱炭酸処理を行う。 ◇ 副産物の利用 : 副産物のグリセリンに対しては、平成25年度と同様、中性エステルとして、炭酸ジメチルなどの溶媒を用い、グリセロールカーボネートへの変換を行う。 ◇ 高品位バイオ軽油創製のために燃料品質評価 : 廃油やクルカス油から得られたバイオ軽油に対し、その品質評価を行い、高品位のバイオ軽油を得る方策を明らかにする。そのために密度、動粘度、引火点、流動点、セタン価、発熱量、酸化安定性などを測定し、バイオ軽油燃料としての燃料特性評価を行う。その結果を基に、どの種の油脂類からも高品位のバイオ軽油を得る可能性を明らかにする。
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