研究課題/領域番号 |
25660281
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
加藤 祐輔 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫機能研究開発ユニット, 上級研究員 (60214409)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生物学的封じ込め / 遺伝子組換え生物 / 翻訳調節 / 非天然アミノ酸 / 合成生物学 |
研究概要 |
(1)非天然アミノ酸依存性翻訳スイッチによる遺伝子発現の調節: 非天然アミノ酸依存性翻訳スイッチは、非天然アミノ酸を必須栄養素として要求する大腸菌を作出するための鍵技術である。非天然アミノ酸が存在しないとき、発現量がほぼゼロになることが重要となる。アンバー終止コドンに非天然アミノ酸3-ヨウ化-L-チロシン(IY)を導入するアミノアシルtRNAシンテターゼ/tRNA系では、IYが存在しなくても約7%の漏洩翻訳が認められた。これは、シンテターゼまたはtRNAの発現抑制との併用、標的遺伝子に挿入するアンバー終止コドンの多重化、およびシンテターゼのプロモーターの適切な選択により、<1%に抑制できた。さらに、標的遺伝子の転写調節との二重制御により、漏洩発現をほぼ完全にゼロに抑制することに成功した。成果は論文として公表した。 (2)生存に必須な遺伝子の発現が非天然アミノ酸依存する大腸菌の作出: 全ゲノム配列が公表されている実験用大腸菌DH10Bに、アンバー終止コドンにIYを導入するアミノアシルtRNAシンテターゼ/tRNA発現プラスミドを形質転換しようとしたが、目的の形質転換体は得られなかった。DH10Bは、アンバー終止コドンの抑制に対して致死であると推測された。そこで、全ゲノム配列が明らかな他の系統として、大腸菌BL21(DE3)を選択し、上記のシンテターゼ/tRNA発現プラスミドの導入に成功した。3-ヨウ化-L-チロシン存在下でアンバー終止コドンを翻訳する条件下で、必須遺伝子のひとつlpxCをアンバー終止コドンを挿入した変異遺伝子と置換した系統を作出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
翻訳スイッチによって、非天然アミノ酸存在時には十分な発現があり、かつ存在しない時には完全に発現をゼロに抑えることができた。これは、非天然アミノ酸を必須栄養素とする大腸菌系統を作出するのに、この翻訳スイッチは十分な性能をもつことを裏付ける結果である。また、大腸菌の生存に必須な遺伝子のひとつlpxCを、翻訳スイッチの制御下に置くために、アンバー終止コドンを挿入した変異遺伝子置換系統の作出にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
現在進行中のlpxCアンバー終止コドン挿入系統の評価を進める。また、非天然アミノ酸存在下でのみ発現する抗毒素による、能動的封じ込めについても、研究に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
PCRプライマーとして用いるオリゴDNAの合成費用に、見積もりとの若干の差額が生じた。実験結果に影響される避けられない誤差である。 次年度の同費目として繰り入れて、上記の理由による誤差の緩衝とする。
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