研究課題/領域番号 |
25660287
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小野 道之 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50201405)
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研究分担者 |
竹内 薫 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (00192162)
北村 豊 筑波大学, 生命環境系, 教授 (20246672)
森川 一也 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (90361328)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 遺伝子組換え植物 / ウイルス様粒子 / 果実特異的発現 / 形質転換植物 / 食べるワクチン / トマト |
研究概要 |
従来の「食べるワクチン」には、(1)抗原タンパク質の生産量が低い、 (2)抗原タンパク質が消化される、(3)粘膜免疫の誘導が困難、という問題点があり、実用化に対する障壁になってきた。本研究では、トマトの果実中に高い濃度で発現させること、胃酸に耐性があって腸管の粘膜免疫を特異的に誘導するウイルス様粒子(VLP: Virus Like Particle、非病原性のカプシドタンパク質にインフルエンザ共通抗原(M2)を融合させたもの)を用いることにより、これらの問題点を克服することを目的とした。筑波大学遺伝子実験センターの遺伝子組換え植物栽培施設を活用し、医学系の共同研究者とのサルを用いた投与実験を行うための材料とするに十分な量のトマト果実を生産することを目標とする。 E型肝炎ウイルスのカプシドタンパク質(ORF2)の親水的な領域にM2を融合したcDNAを、トマト果実に特異的なE8プロモーターに接続したコンストラクトを作成、実験室用トマト「品種マイクロトム」の形質転換植物を作出した。比較のためにCaMV(カリフラワーモザイクウイルス)35Sプロモーターを用いたコンストラクトを作成、さらに、タンパク質の蓄積状態を調べるために緑色蛍光タンパク質(ZsGreen)を発現するコンストラクトも作成し、これらの形質転換植物も作出した。タンパク質の発現量をPAGE-ウェスタンブロティングで調べると共に、導入タンパク質の蓄積状態をZsGreenタンパク質の発現により比較解析した。これらの結果、E8プロモーターと35Sプロモーターのそれぞれにおいて、優良な系統を作出することができた。現在、大果の生産品種である「愛知ファースト」と交配し、その一代雑種世代を用いて、環境影響評価試験用網室において、遺伝子組換えトマトの果実を収穫している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H25年度に達成する目標として、コンストラクトの完成、モデル植物「マイクロトム」の形質転換、カプシドタンパク質の高産生株の選抜、大果品種の閉鎖系網室における栽培、の4点を挙げた。本研究開始前からの蓄積を含めてはいるが、目標はクリアできた。特に、大果品種との交配では、一代雑種を作ることができ、これらの果実をkgのレベルで凍結保存しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、果実中のVLPのタンパク質量を、系統毎に調べる。果実中にVLPが形成されているか、密度勾配遠心で調べるとともに、電子顕微鏡等でVLPの形状を観察する。VLPの免疫誘導能の検証として、遺伝子組換え果実の破砕物(トマトジュース)をサル及びマウスに経口投与し、血清中あるいは糞便中から目的とする抗原ペプチドに対するIgG、IgA抗体の検出を試みる(共同研究者による)。また、マイクロトムの形質転換植物系統については、T-DNAの挿入配列の周辺配列の塩基配列解析を行う。さらに、VLPを損なわないトマト加工品作りとして、サルに与えるトマトジュース等を安定的に作出する、トマトの凍結乾燥保存法についても試みる。以上の研究により得られた結果をまとめて、成果の発表を行う。本研究により、異分野を統合した新規の共同研究が発展するきっかけとなることを期待したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
形質転換トマトの栽培試験は年度を越えて引き続き行うため。 2年目の研究を推進するため。 当初の計画を変更することなく、研究を推進する。
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