研究課題
挑戦的萌芽研究
植物は病原菌の攻撃に応答して急激な活性酸素種 (ROS) の生成を引き起こす。この反応はROSバーストと呼ばれ、植物免疫反応において重要な役割を果たすことが知られている。ROSバーストは、原形質膜に存在するNADPHオキシダーゼであるRBOH (respiratory burst oxidase homolog) によって引き起こされる。これまでに、RBOHは、転写レベルに加え、翻訳後修飾により活性調節されることが知られていた。申請者は、RBOHのN末端側領域のセリンが、カルシウム依存性プロテインキナ-ゼ (CDPK) によって直接リン酸化されて活性化されることを発見した。しかし、生体内におけるRBOHの活性化を実際に観察した例はない。本研究では、RBOHの活性化状態の動態を観察できるイメージングシステムを構築し、新たなシグナルネットワークの発掘を可能にする先駆的モデルを提示することを目的とした。本年度は、バイナリーベクターにエフェクターとして恒常活性型変異体CDPK5-CAまたは非活性型のCDPK5-CA-K/Mを35Sプロモーターの下流に挿入した。さらに、RBOHB由来のN末端側断片、RBOHB認識ドメイン、そして2種類の蛍光タンパク質として、mVenus (YFP)とmCerulean (CFP) を連結したコンストラクトをもう一つの35Sプロモーターの下流に挿入した。以上のように、FRETコンストラクトの基本構造を構築した。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、バイナリーベクターにエフェクター、およびFRETコンストラクトを作製し、植物葉に一過的に発現させることによって、FRETコンストラクト内のRBOHB のN末端側断片がリン酸化されることを確認した。この結果は、FRETコンストラクト内のRBOHがCDPK活性によってリン酸化されることを示している。このように、構築したFRETコンストラクトが組織内で機能することが示された。
蛍光タンパク質であるmVenus (YFP)とmCerulean (CFP) によるFRETの強度は、2種の蛍光タンパク質間の距離と角度が重要であることが知られている。より安定した高感度な蛍光を得るには、生体内で2種の蛍光タンパク質が理想的な配置をとるパターンを探索する必要がある。そこで、来年度はサイズの異なる様々なRBOHBのN末端断片を調製し、FRETコンストラクトに導入し、蛍光強度の最適化を図る予定である。
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