植物は、病原菌の攻撃に応答して急激な活性酸素種 (ROS) の生成を引き起こす。この免疫反応はROSバーストと呼ばれ、過敏感反応において重要な役割を果たすことが知られている。ROSバーストは、主にNADPHオキシダーゼであるRBOH (respiratory burst oxidase homolog) によって引き起こされる。これまでに、RBOHのN末端側が、カルシウム依存性プロテインキナ-ゼ (CDPK) により直接リン酸化されて活性化されることを見出した。本研究では、RBOHのリン酸化状態の動態を可視化するバイオセンサー (RBOHセンサー) を作製し、病原菌が感染した細胞でRBOH活性を時空間的に観察することで、ROSの新たなシグナルネットワークの発掘を可能にする先駆的モデルを提示することを目的とした。 本RBOHセンサーは、CDPKによる基質タンパク質のリン酸化に応答し、2種の隣接した蛍光タンパク質間で蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET) が起こるように構成されている。蛍光タンパク質であるmVenus (YFP) とmCerulean (CFP) によるFRETの強度は、YFPとCFP間の距離と角度が重要であり、RBOHのリン酸化に依存して生体内で理想的な配置をとる構造を模索する必要がある。そこで、平成26年度は、サイズの異なる様々なRBOHBのN末端断片を調製し、FRETコンストラクトに導入して蛍光強度の最適化を図った。FRET強度比 (ON/OFF) については、1.3以上であることが実用レベルのセンサーの目安とされる。しかしながら、今回この数値を上回る蛍光強度は得られなかった。
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