研究課題
挑戦的萌芽研究
動物細胞を用いて生産したタンパク質は、医薬品や研究用試薬として製薬業界やバイオ産業界において大きな需要を持つ。しかし動物細胞での生産性は低く、画期的な生産法の開発が期待されている。このような状況の中、申請者は動物細胞におけるタンパク質生産の律速段階がmRNAの核から細胞質への輸送(核外輸送)段階であることを発見した。そこでmRNAの核外輸送受容体TapとMS2コートタンパク質を用いて第1世代の標的mRNA専用輸送体を創出し、従来の発現系の5倍の効率でタンパク質を生産することに成功した。本研究は、TapおよびMS2コートタンパク質それぞれの機能に必須な部分のみを取りだし、自由に組み合わせる「ドメインエンジニアリング」技術を用いて、第2世代mRNA輸送体を創成する。これにより革新的な動物細胞生産系を開発する。本研究の成果は、ドメインエンジニアリング技術を用いて様々なタンパク質のドメインを新たなバイオロジーの材料として活用し、基礎研究や産業利用に役立つ分子の設計研究に展開する基盤となる。mRNA輸送体Tapの領域を切り貼りして様々な欠損変異体を作製し、MS2コートタンパク質を融合した融合タンパク質を作製した。これを動物細胞における医薬品タンパク質の生産で最も良く用いられているCHO細胞や基礎研究で汎用されるヒトHEK293細胞で検証した。作製した10種類の変異型Tapタンパク質とMS2コートタンパク質を融合した融合タンパク質は、野生型のTapとMS2コートタンパク質を融合した融合タンパク質よりもタンパク質生産性を向上させることを示した。
2: おおむね順調に進展している
これまで野生型のTapとMS2コートタンパク質を融合した融合タンパク質を用いることで従来の発現系よりも高いタンパク質生産性を実現した。今回、Tapの不要な部分を除去することでさらに発現の向上を観察した。
現在、一過性の発現においてよりよいタンパク質生産性を確認している。今後、安定発現株においても同様の現象が観察できることを実験的に証明する。また、CHO細胞やHEK293細胞で変異型Tapタンパク質とMS2コートタンパク質を融合した融合タンパク質を安定かつ高度に安定発現する細胞株を作製する。
当初期待していた成果が順調に上がったために、予定していた条件検討等の実験をする必要がなくなった。このためそれら実験に使用するための費用の拠出が不要となった。さらに機能の高い因子を創成するために、従来よりも幅広い条件で作製する。このための作製や検証の費用に使用する。
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