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2013 年度 実施状況報告書

セイロンベンケイの不定芽形成を利用した遺伝子導入法の開発と不定芽形成機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 25660297
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関東邦大学

研究代表者

高橋 秀典  東邦大学, 理学部, 准教授 (70318210)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードセイロンベンケイ / 不定芽 / 細胞・組織工学
研究概要

まず最初に、遺伝子導入の成否を容易に判断できるsGFP-tubulin遺伝子に注目し、この遺伝子がクローニングされたベクターを用いて、アグロバクテリウムの形質転換を行った。
こうして作製されたアグロバクテリウム株とベクターに問題がないことを確認するため、コントロールとしてシロイヌナズナにsGFP-tubulin導入を試みた。カナマイシンによる薬剤選抜で残った個体ではsGFP-tubulinの特徴を示す緑色の繊維状構造が観察され、菌体とベクターの調製に問題は無いことが確認できた。
そこで、このアグロバクテリウムを用いて植物体の形質転換を行った。この時、減圧浸潤処理と物理的傷害処理の2種類の手法を試みた。アグロバクテリウム感染処理後にカナマイシンによる薬剤選抜を行うと、いずれの場合でも植物体が白色化あるいは枯死してしまい、最終的に遺伝子導入体候補と思われる緑色をした植物体は残らなかった。一方、物理的傷害処理の手法で薬剤選抜を行わずにそのまま培養すると、遺伝子導入体候補が得られた。これらの候補に対するゲノムPCRでは、sGFP-tubulin及びnptII遺伝子が増幅された。しかし、プラスミド上には存在するが植物には導入されないVirG遺伝子も増幅された。従って、現時点ではこれらの個体では遺伝子導入の成否は不明だが、少なくともアグロバクテリウムの除菌が不十分であることがわかった。
さらに、植物ホルモンによる葉上不定芽形成機構を明らかにするために、サイトカイニンに注目した。遺伝子操作により内生サイトカイニン量を変化させるため、シロイヌナズナのサイトカイニン分解/合成に関わる遺伝子(順にCKXとIPT 遺伝子)をRT-PCRで増幅した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の研究計画では、平成25年度は、植物細胞での遺伝子の恒常的発現を可能にする35S プロモーターの下流にsGFP-tubulin遺伝子をつないだベクターを用意し、これを用いてセイロンベンケイの葉上不定芽を利用した遺伝子導入法を開発する予定となっていた。実際には、sGFP-tubulin遺伝子がクローニングされたベクターの用意とアグロバクテリウムの形質転換までは成功したものの、現在までのところ、葉上不定芽を利用した遺伝子導入が成功したかどうかを確認できるまでには至っていない。
しかし、シロイヌナズナを用いてこれらのベクターとアグロバクテリウムの遺伝子導入能力についての確認をとるという、当初予定されていた以外の作業を実施し、実際にそれらの調製において問題がないことを確認することができた。また、平成26年度に実施予定であった研究内容の一部、すなわち、シロイヌナズナのサイトカイニン分解/合成に関わる遺伝子(順にCKXとIPT 遺伝子)のクローニングに向けたRT-PCRを、平成25年度に前倒しで実施することができた。そして、RT-PCRが成功した場合に予想されるサイズと一致する増幅産物が、CKXとIPT 遺伝子それぞれで検出できている。
これらのことを総合的に考えると、やはり平成25年度に予定していた遺伝子導入系の確立には至っていないので、その点の遅れは否めない。しかし、当初は予定していなかったが、研究の大前提となるベクターとアグロバクテリウムの調製に問題がないことの確認がとれたので、今後安心してそれらを使用することができる点は大きい。また、平成26年度に予定されていた作業の一部を前倒しすることができた。そこで、両者の差し引きで、現在までの達成度は「やや遅れている」の区分と判断した。

今後の研究の推進方策

まず、葉上不定芽を利用した遺伝子導入法の開発では、現状、アグロバクテリウムの除菌が不十分であるために、遺伝子導入体候補に対してゲノムPCRを行っても、遺伝子導入の成否が正確に判定できていない。そこで、除菌に使う抗生物質の濃度や種類を変更することで、感染処理後のアグロバクテリウムの除菌を完全なものにする。除菌が完全に行われているかどうかの調査は、感染処理後の植物に対するゲノムPCRを行い、プラスミド上には存在するが植物には導入されないVirG遺伝子が増幅されるか否かを指標にする。
その後再び、減圧浸潤処理と物理的傷害処理による遺伝子導入を試みる。成否の判定では、ゲノムPCRでsGFP-tubulin、nptIIの各遺伝子の増幅を確認するだけでなく、sGFP-tubulinの特徴を示す緑色の繊維状構造が蛍光顕微鏡で観察できることも確認するという、二重のチェックを行う。
一方、植物ホルモンによる葉上不定芽形成機構の解明では、現在、CKXとIPT 遺伝子がRT-PCRで増幅できている。それぞれをベクターにクローニングした後、塩基の取り込み間違いやクローニング時のコドンのずれが無いことをシークエンシングで確認し、アグロバクテリウムの形質転換、続いてセイロンベンケイへの遺伝子導入を行う。
CKXとIPTの各遺伝子の発現を変化させた植物体では、内生サイトカイニン量が変化する。このことが葉上不定芽形成にどのような影響を及ぼすかを観察することで、葉上不定芽形成におけるサイトカイニンの重要度や機能を明らかにする。なお、CKXとIPT 遺伝子の導入時に前述の遺伝子導入法の開発が間に合わなければ、カルスへの遺伝子導入・植物体の再生という、従来からある古典的手法を用いる。

次年度の研究費の使用計画

平成25年度の実験で実際に購入した消耗品は、当初想定していたよりも安価で購入することができた。そのために、使用額の合計も想定よりも少額で済んだため、次年度使用額が生じた。
平成25年度分の残額は、平成26年度配分額とあわせて、平成26年度の研究で物品の購入に充てる予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 備考 (1件)

  • [備考] 東邦大学理学部生物学科植物生理学研究室ホームページ

    • URL

      http://www.lab.toho-u.ac.jp/sci/bio/plant_phys/research/index.html

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公開日: 2015-05-28  

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