鉄錯体触媒を用いるBelouzof-Zhabotinsky反応における配位子の効果を系統的に調べた.ビピリジン配位子について置換基の効果を検討した結果,メチル体で振動回数を増加させられることを示した.基質について系統的に検討した結果,ピロガロールをはじめとする電子過剰のフェノール誘導体がよい結果を与えた. 溶液中の振動反応は強力な増殖過程を含むはずであり,生成物が反応の触媒になる自己触媒反応を含むとされている.振動反応を本質的に理解するためにはこの反応の基礎研究が必要であるが,未開拓であった.本研究に関連してヘリセンオリゴマーがランダムコイルから二重ラセン構造を形成する過程で自己触媒反応を引き起こすことを見出したので,この反応の性質を検討した.熱的ヒステレシスを利用してランダムコイルと二重ラセン溶液を準備した.これらは数時間安定であるが,混合するとすみやかに二重ラセン状態に変化した.これは自己触媒の明確な証拠である.この反応の速度論解析も自己触媒であることを示した.すなわち,シグモイド形の反応経過を示したとともに,二分子会合反応と自己触媒二分子反応を組み合わせた速度論が実験値と極めてよい一致を示した.また,自己触媒反応系では,平衡状態を越えて二重ラセン形成を起こすことを示し,この現象を平衡交差と命名した.これまで,振動反応は非平衡状態から平衡状態に変化する過程で起こり,平衡状態を交差することはないとされていたので,今回の現象は従来の概念を変える必要がある可能性を示した.
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