研究課題/領域番号 |
25670006
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
東屋 功 東邦大学, 薬学部, 教授 (50276755)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 不斉結晶化 / 結晶多形 / 対称性の破れ / 結晶成長 / キラルライブニング / 自然分晶 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続きインドール環をもつスルホンアミドについて、結晶中における分子配列、分子間に働く相互作用と不斉結晶化との関係について調べた。昨年度、アミノ基の置換位置が異なるインドールアミンと種々の官能基をもつスルホニルクロリドを組み合わせて40種類の化合物を合成し、結晶化条件スクリーニングを行ったのちX線解構造析を行ったところ、36種類の化合物について41種類の結晶構造が得られた。このうち10個の結晶が不斉結晶化していた。これまで解析を行った507種類の芳香族スルホンアミドが不斉結晶化を示す割合は8.7%であり、今回解析を行った化合物群では27.7%であることから、インドール誘導体は異常に高い比率で不斉結晶化を示した。不斉結晶化した化合物は4位置換体と7位置換体に集中しており、4位置換体では10個中5、7位置換体では9個中5の結晶が光学活性であった。一方5位、6位置換体では光学活性な結晶は全く得られなかった。この結果に基づき、本年度はまず芳香族スルホンアミドの結晶中における水素結合パターンと不斉結晶化を示す頻度について調べた。得られた結晶構造のうち、Dimer型が見られたものは19(不斉結晶化1)、Straight型は9(同4)、Helical型は5(同5)、Zigzag型は5(同0)、基本的な水素結合パターンを取っていなかったものが3(同0)であった。本年度はまた、近年注目されているハロゲン結合について不斉結晶化との関連について調べた。ハロゲンを含む芳香族スルホンアミドを種々合成し、結晶構造解析を行い、これまでに得られたハロゲンを含む化合物の結晶構造のデータを合わせてハロゲンを含む化合物の不斉結晶化の頻度を調べたところ、全体の頻度(8.7%)の半分以下(4.1%)となり、ハロゲンが示す分子間相互作用が不斉結晶化の頻度を著しく低下させることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
申請時に予定していた円偏光照射下における不斉結晶化の対称性の破れの観測については、研究開始年度に所属研究機関の変更があり、新しい所属研究機に必要な設備(円偏光照射装置)がなかったため、実施することができなかった。また、計算科学を行うための汎用的な計算機システムが十分でなく、キラル、アキラルの多形を示す化合物について、パッキングのエネルギーの計算科学的な評価法の確立が十分に行えていない。一方、X線結晶構造解析装置については、昨年度に申請を行っていた文部科学省私立大学等研究設備整備費等補助金により本年度8月に導入を行うことができ、設置調整の後、10月より本研究の遂行に必要な単結晶X線結晶構造解析を本格的に開始した。対象とする化合物について、芳香族アミド、スルホンアミドはそれぞれ約20および100種類の化合物の合成および結晶化条件スクリーニングを行い、約1/3の化合物の結晶についてX線解析を行った。アミド、スルホンアミド以外の誘導体の合成および結晶構造解析については、上記X線解析装置の新規導入のため十分な時間を割り当てられず目標を達成していない。
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今後の研究の推進方策 |
研究開始から約1年半を経て単結晶X線構造解析をルーチンで行う体制が整ったので、これまでに合成した芳香族スルホンアミドを中心とする各化合物の結晶について、順次測定および解析を行う。スルホンアミド、アミド以外の官能基をもつ化合物についても、順次合成を行い、結晶化条件スクリーニングおよび結晶構造解析を行う。また、パッキングのエネルギーの評価について、計算科学的な手法の確立を目指す。
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