研究概要 |
薬物の反応性代謝物は、タンパク質・DNAとの共有結合を介し想定外の副作用を惹起する。そのため医薬品開発現場では、反応性代謝物の分析・反応性評価に、グルタチオンで捕捉・解析するトラッピング法が汎用されている。しかし、Cys以外の共有結合を評価できない事、LC分離によるスループットの低さ、MS/MS解析の煩雑さなどの課題を残す。そこで、従来法の欠点を克服するため、求核性アミノ酸側鎖およびDNAをモチーフとした試薬カクテルを調製し検討した(Arg型, 1-methylguanidine, D0/D3; Cys型, 2-mercaptoethanol, D0/D4; His型, 4-methylimidazole, D0/D5; Lys型, n-butylamine, D0/D9; DNA塩基型, 2’-deoxyguaninosine, 13C015N0/13C115N2; 非標識体:標識体=1:1)。モデル代謝物にはN-acethyl-p-benzoquinone imine、ketoprofen-N- hydroxysccinmide、2-oxoticlopidineなどを用いた。その結果、各プローブは、保存・インキュベート中安定であった。MSのイオン化は、測定対象の相違に寛容かつ高流速での使用が可能なAPCIを選択した。またショートカラムを用いたLC条件を最適化し、1サンプル1.8分の測定が可能であった。捕捉したモデル代謝物は、ダブレットピークの質量差により、反応点を同定出来た。質量差が同じArgとDNA型プローブの付加体は、デオキシリボースのインソース脱離(-116 Da)で分別出来た。また、グルタチオンで捕捉困難なアルデヒド類も、Lys型プローブ付加体として検出出来た。ミクロソーム中で生成したacetaminophenの代謝物もCys型プローブ付加体として確認出来た。
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