研究課題/領域番号 |
25670009
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 大 東京大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (30332943)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | タンパク質 / HPLC / ナノ構造 / 電気二重層 / 流体力学 / ナノ粒子 |
研究概要 |
電気二重層や流体力学の効果が分離カラムの内径を細くすることで顕著になると予想したので、内径の細いカラムを用いたHPLCシステムの構築を目指した。内径が細いカラムでは、カラム体積が小さいので、移動相の流速や試料の注入体積を少なくする必要がある。そこでまず、内径25マイクロメートルのカラムを用いて50nLのヘモグロビン溶液を注入した結果、2本のピークに分離して検出された。2本のピークは、他のタンパク質や低分子化合物を注入した際にも検出され、さらに2本のピーク間の体積差は試料物質には依存せず、オートサンプラーのループ体積に相関していた。以上のことから、オートサンプラーで微量体積を注入すると、ループ部位で試料プラグが2つに分離していると考えた。 一般的なHPLC用のカラム(内径4.6 mm)と比較して、内径25マイクロメートルのカラムは、断面積が約3万分の1になっているので、移動相の線速度を変化させないためには、数10nL/分の送液が必要になる。このような少ない流量で安定した送液を実現するために、スプリットを利用することにした。ポンプの流速、廃液側の抵抗を調節することで、移動相を低流速で安定に送液できるようになった。またスプリットの利用によって、注入した試料体積が100分の1程度に減少するため、微量体積の試料を注入する必要が無くなり、上記の試料プラグが2つに分断する問題も克服できた。 次に、数10ナノメートルの細孔を有するモノリス型カラムを用いて電気二重層及び流体力学の効果を検証した。試料には、大きさや表面電荷を調節することが可能なナノ粒子を用いた。粒子径と表面電荷を変化させたナノ粒子を分析した結果、大きさに基づく分離は確認されたものの、表面電荷の違いによる分離は確認できなかった。したがってナノ粒子の分離の場合は、電気二重層の効果よりは、流体の効果によって分離が行われていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの検討により、内径25マイクロメートルのフューズドシリカキャピラリーを分離カラムに用いたHPLCシステムの構築に成功した。スプリットを用いることで、低流速で安定した送液に成功した。構築したシステムを用いて、移動相として燐酸緩衝液を用いることでタンパク質の分離を試みている。
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今後の研究の推進方策 |
計画に従って、構築したシステムを用いて機能を維持した状態でタンパク質を分離する手法を開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
細い内径のカラムを用いたHPLC装置の構築が予定より早く構築できたため、検討に必要な試薬の量を削減できたため、検討に要する費用が少なくなった。 多数のタンパク質試料を用いて検討することで、開発した手法の有効性を実証する。
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