研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究では、がんの悪性度の可視化と微小がんの高感度検出を目的として、タンパク質との相互作用によってMRI信号強度が大きく変化するMn2+イオンを搭載でき、低酸素領域(Hypoxia)の低pH環境において選択的にMn2+イオンを放出するリン酸カルシウム(CaP)ミセル型MRI造影剤の開発を行っている。平成25年度は、研究計画に従って、ブロック共重合体の種類(PEG-PAspおよびPEG-PGlu)と組成ならびにミセル構成成分の混同比の最適化を行うことによって、粒径80nmのMn搭載CaPミセルを調製することに成功した。このMn搭載CaPミセルは、さまざまな物性評価を行った結果、低pH条件でMn2+イオンをリリースし、Mn2+イオンがアルブミンと相互作用することによって信号強度が約10倍に増大することが確認された。一方、Mn搭載CaPミセルによる固形がんのMRIに関しては、低磁場(1 Tesla) MRIと高磁場(7 Tesla) MRIによるイメージングの結果の比較を行い、低磁場MRIによって腫瘍の中心部がイメージングされ、時間と共により鮮明になることが明らかになった。そこで腫瘍内のHypoxiaをピモニダゾールを用いて染色したところ、低磁場MRIで強く造影された部位とHypoxia染色で陽性だった部位がほぼ一致することが確認された。以上の結果より、Mn搭載CaPミセルは、Hypoxiaの低pH環境において選択的にMn2+イオンを放出し、タンパク質と相互作用することでMRI信号強度が増大するHypoxiaイメージング用プローブとして機能することを実証することができた。
1: 当初の計画以上に進展している
当初計画どおりに、Mn搭載CaPミセルの調製条件の最適化を行い、本ミセルによって固形がんのHypoxiaのイメージングが可能になることを明らかにした。また、現在、計画を前倒して転移がんのイメージングに着手しており、微小がんが検知されるという予備試験の結果が得られている。
Mn搭載CaPミセルのHypoxiaのイメージングの精度やメカニズムを解明するために、腫瘍内の乳酸のマッピングやマイクロMRIよる評価を行う。また、Mn搭載CaPミセルを大腸がんの微小肝転移等の転移モデルのイメージングへと展開し、本システムの微小がん検出における有用性を明らかにする。また、さらなる高感度化が必要であればMn搭載CaPミセルへのリガンド分子の導入にも着手する。
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