研究課題
本研究では、がんの悪性度の可視化と微小がんの高感度検出を目的として、タンパク質との相互作用によってMRI信号強度が大きく変化するMn2+イオンを搭載でき、低酸素領域(Hypoxia)の低pH環境において選択的にMn2+イオンを放出するリン酸カルシウム(CaP)ミセル型MRI造影剤の開発を行っている。Mn搭載CaPミセルは、EPR効果に基づくがん集積効果に加えて、腫瘍内で大幅にMRI信号強度を増大させることができるために、既存MRI 造影剤や従来のナノ粒子型造影剤と比較して高いS/N比を実現することができるものと考えられる。そこで本年度は、大腸がん細胞の肝転移モデルを作成し、MRIを実施したところ、Mn搭載CaPミセルの利用により2mmの微小転移巣が検知できることが明らかになった。また、既存の肝がん造影用MRI造影剤(プリモビスト)との比較においては、プリモビストは-25%の陰性造影効果を示したのに対して、Mn搭載CaPミセルは+75%の陽性造影効果を示すことが明らかになった。プリモビストでは、がんと同様に陰性に造影される出血や傷害部位等とがん組織の識別が困難であるが、Mn搭載CaPミセルではこのような問題がなく、より高感度に微小がんを検知できるものと考えられる。一方、環状RGDペプチドを搭載したMn搭載CaPミセルについては、CaPミセルへのペプチドの導入方法を最適化した。今後は、環状RGDペプチドを導入した系についても転移がんのMRIを中心に評価を行う予定である。以上のように、本研究では、研究目的に従って、Mn搭載CaPミセルを構築し、がんの低酸素領域のイメージングと微小がんの高感度検出を行うことに成功した。
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