研究課題/領域番号 |
25670011
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
加藤 将夫 金沢大学, 薬学系, 教授 (30251440)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 経皮吸収 / 貼付剤 / 添加剤 / トランスポーター / ドラッグデリバリー |
研究概要 |
Breast cancer resistance protein (BCRP)とp-glycoprotein (P-gp)はATPの加水分解エネルギーを駆動力として多種多様な物質を細胞外へ排出する膜輸送体である。これら膜輸送体は、皮膚では表皮の基底層や真皮の血管内皮に局在し基質を表皮側から真皮側へ輸送する。この皮膚膜輸送体を経皮投与医薬品に含まれる添加剤で制御することを目的に、BCRPとP-gpの機能に及ぼす種々の添加剤の影響を解析した。BCRPを過剰発現させたMDCK/BCRP細胞に、種々の濃度の添加剤とともにBCRPの典型的蛍光基質であるHoechst33342を添加後、蛍光顕微鏡で細胞を観察することによってその阻害効果を蛍光強度の上昇で評価した。添加剤の濃度依存性を調べ、阻害定数を求めたところ、添加剤の分子量とは明確な相関がなかった一方、オクタノール/水分配の計算値(xlogP)とは相関関係が認められ、3から4付近で最も強い阻害効果が見られた。続いて、BCRPに対する阻害効果をより明確に示す目的で、MDCK/BCRP細胞における蛍光基質の経細胞輸送を評価し、添加剤の効果を検討した。その結果、取り込み試験において阻害効果の認められた添加剤存在下で、basalからapical方向への輸送が低下し、逆にapicalからbasal方向への輸送が上昇したことから、添加剤がBCRPによる経細胞輸送を阻害することが示された。以上より皮膚に発現する膜輸送体の一部が、添加剤によって阻害を受けることが示唆され、膜輸送体阻害による貼付剤の体内動態制御の可能性が示された。現在、P-gpに及ぼすこれら添加剤の影響について、LLC-pK1/P-gp細胞と典型的基質であるrhodamine123を用い検討中であり、一部添加剤が弱いながらもP-gpを阻害する結果を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載の通り、膜輸送体P-gpとBCRPのヒト遺伝子を安定導入した上皮細胞(LLC-pK1/P-gp、MDCK/BCRP)、膜輸送体それぞれの典型基質であるrhodamine123とHoechst33342を用い、添加剤の効果の解析を行っており、阻害活性を示す添加剤も見いだされていることから、順調に研究が進んでいる。さらに現在、in vivoにおける添加剤の影響についても検討を進めており、予備的な結果が出つつあることから、今後も研究計画の達成が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
皮膚膜輸送体に及ぼす添加剤の効果の検討をin vitroおよびin vivoで引き続き進める。一方で、動物実験において薬物との併用実験を進め、体内動態や作用に及ぼす影響も検討する。これまで調査した添加剤の中で、BCRPを阻害する添加剤は複数見いだされている一方、P-gpを阻害する添加剤が乏しい。対応策として、rhodamine123だけでなく、他のP-gp基質薬物を用いた解析を同時に進めている。
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