研究課題/領域番号 |
25670012
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宇野 公之 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00183020)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 薬物代謝 |
研究概要 |
シトクロムP450(CYP)はヒト薬物代謝の中心的役割を演じる重要な酵素であるが、いくつかのアイソフォームがある上に基質特異性がきわめて低いという特徴を持つ。このため、CYPと基質薬物とは多対多の関係にあり、CYPによる薬物代謝の理解をきわめて困難にしている。本研究では、申請者が確立した可溶性ヒトCYPの大量発現系を利用し、(1)金薄膜表面への活性型CYP固定化、及び(2)金電極を用いた酵素活性の評価、という2つのサブテーマを解決する。 平成25年度は電極反応を利用したCYPの薬物代謝活性評価を行い、CYPの機能にかかるハイスループット測定系の確立を目指した。まず、市販の金電極を作用電極として酸化還元サイクル処理を行った。この電極をエタノールに溶解した種々のアルカンチオールに浸し、一晩放置した。アルカンチオールはチオール基で金に配位するため、電極表面に自己集積型単分子膜を形成する。これをエタノールですすいで風乾後、CYPを含む溶液に浸してCYPを電極表面に吸着させた。種々のアルカンチオールを組み合わせ、検討した結果、疎水鎖としてナフタレンを持つチオールを用いた場合、サイクリックボルタンメトリーによってCYPに由来する還元波を観測できたことから、良好な単分子膜の形成とCYPの吸着を確認できた。しかしながら、繰り返しの使用によってCYPが電極表面から脱離する現象が見られたため、CYPの保持を確保するとともに、吸着量を増やす方策について検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
種々のアルカンチオールを試すことにより、金電極表面に自己集積型単分子膜を形成させることができた。また、サイクリックボルタンメトリーの測定によってCYPの吸着を確認できるとともに、少なくとも電極を用いてCYPの還元を行えることが明らかとなり、サブテーマ(1)「金薄膜表面への活性型CYP固定化」を達成できたため。
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今後の研究の推進方策 |
金電極表面へのCYPの吸着を達成できたが、繰り返しの使用によってCYPが電極表面から脱離する現象が見られたため、CYPの保持を確保するとともに、吸着量を増やす方策として、電極表面をゲル膜で被覆することを検討したい。また、本電極を用いてサブテーマ(2)「金電極を用いた酵素活性の評価」について検討を行う予定である。さらに、自己集積型単分子膜の形成に成功した知見を活かしてBiacore用金センサーチップを作成することにより、CYPと薬物の結合親和性を簡便かつ安定に測定できる実験系を構築していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
金電極表面のコーティングに用いるアルカンチオール類の検討が予想以上に早く進み、検討に用いる試薬の数を少なく抑えられたため。 電極表面からのCYPの脱離が観測されたことから、これを抑える方策を検討するための試薬の購入費に充当したい。
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