研究課題/領域番号 |
25670016
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
佐久間 信至 摂南大学, 薬学部, 教授 (80388644)
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研究分担者 |
川上 亘作 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, MANA研究者 (00455271)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 吸収促進 / バイオ医薬 / オリゴアルギニン / オリゴアルギニン固定化高分子 / エレクトロスプレー / 腸溶性 |
研究概要 |
バイオ医薬の経口吸収改善技術はDDSを中心に研究されているが、臨床的に価値のある技術は見出されていない。その主な要因として、技術の安全性と消化管の広い空間で技術の機能不全を引き起こす希釈の問題が挙げられる。本研究において、前者の要因を解決する要素技術はオリゴアルギニン固定化高分子である。細胞が本来備えている貪食作用の1つのマクロピノサイトーシスを誘導し、薬物の細胞内取り込みを促進する新規の膜透過促進剤である。少量の添加で、安全かつ効率的に薬物の膜透過を促進することが期待される。後者の要因を解決する要素技術は同軸二重エレクトロスプレー法である。サブミクロンサイズのコア-シェル型微粒子を提供する新規の粒子設計技術である。腸溶性微粒子内に薬物と吸収促進剤を共存させ、吸収部位近傍で両成分を同時に放出させることにより、希釈の問題が軽減されることが期待される。まず、D-オクタアルギニン固定化高分子によるインスリンの吸収促進効果を検討した。マウス十二指腸内に同高分子を共投与した結果、インスリンの血中移行量が増加した。吸収促進効果に及ぼす高分子濃度の影響は明確に認められなかった。別にロピナビルとリトナビル(ロピナビルの小腸上皮細胞内での代謝を阻害して同薬の血中移行を促進する)を用いて、薬物と吸収促進剤の消化管内動態の連係効果を検討した。両成分を含む溶液製剤及び両成分を含有する腸溶性微粒子をラットに経口投与したところ、ロピナビルの平均滞留時間が延び、後者のロピナビルのAUCは前者の約1.5倍となった。ロピナビルとリトナビルを単独で含有する腸溶性微粒子を同時に投与しても、同様の上昇効果は確認されなかった。以上のことから、薬物と吸収促進剤を微粒子内に共存させることにより、両成分の消化管内動態が吸収部位近くまで制御され、吸収促進剤の機能がより効果的に現れる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バイオ医薬を用いた検討を通して、D-オクタアルギニン固定化高分子の吸収促進効果を確認している。この効果のばらつきの大きさ等が解決すべき課題として残っており、H26年度に解決を目指す。腸溶性微粒子内に薬物と吸収促進剤を共存させたときの吸収促進剤の効果増強については、HIV治療薬とその代謝阻害剤を含有する製剤を調製し、阻害剤の効果増強によりHIV治療薬の吸収が促進されることを確認している。H26年度は、バイオ医薬とD-オクタアルギニン固定化高分子を含有する製剤を調製し、研究目的通りの吸収促進効果が得られるかを検証する。
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今後の研究の推進方策 |
エレクトロスプレー技術を有する研究分担者が既に、インスリンを内包するコア-シェル型の腸溶性微粒子を調製している。まずは同製剤とインスリン溶液製剤を比較する。現在までの達成度に記載した問題を別に解決し、オリゴアルギニン固定化高分子の吸収促進効果の安定化を図る。そして、同高分子とインスリンが共存する腸溶性微粒子を調製し、コアの両成分の消化管内挙動を制御して安全かつ効率的にバイオ医薬の膜透過を促進する同粒子を用いた経口吸収改善戦略の可能性を見極める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年4月1日に摂南大学薬学部内に発足した薬物送達学研究室を主宰することが平成25年度中に決まっていた。平成25年度、本研究開始前から旧所属の薬剤学研究室が保有していた備品や消耗品を有効活用し、科研費の予算執行を可能な限り抑えて研究を進めてきた(インスリンの血中濃度を測定するキット製品を中心に購入)。 平成26年度、本研究に必要な備品や消耗品を新研究室にまず揃えなければならない。その後、研究進捗に応じて消耗品を購入するとともに、研究分担者との打ち合わせ、学会発表等の目的で旅費を支出する。新研究室のウェブサイトを新たに立ち上げ、同ウェブサイトで本研究の成果を公開するための費用支出も考えている。
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