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2013 年度 実施状況報告書

腎癌術後検体のマウス連続継代移植による癌悪性化機能分子の探索

研究課題

研究課題/領域番号 25670025
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関大阪大学

研究代表者

辻川 和丈  大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (10207376)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワード腎癌 / 患者癌組織移植マウス / 癌幹細胞 / 増殖因子
研究概要

現在,癌の悪性化機序の研究では,術後臨床検体を用いた遺伝子,タンパク質の発現解析結果を病理所見に基づくステージごとに集計し,統計的処理により相関性を推測するのが一般である.しかし,臨床癌の悪性化変化を実験動物で継続的に追跡できれば,癌悪性化機序の理解において極めて重要な知見を得ることになる.そこで本研究では,大阪大学医学部泌尿器科において,インフォームドコンセントに基づた腎癌術後検体をNOD SCIDマウスに皮下移植し,継代移植を重ね、継続的に悪性化変化の観察を行うこととした。悪性化の変化解析法として、病理組織,腫瘍細胞の3次元培養,遺伝子やmiRNAの網羅的発現解析,癌幹細胞マーカーの発現解析とした。
マウスでの継代移植が確立できた腎癌の病理組織解析を行ったところ、術後では明確にでなかった腎癌細胞像が、継代移植により淡明細胞型と明確に判断できるようになるという特徴を認めた。さらにその腫瘍をNOD SCIDマウスで継代を重ねるごとに、移植早期に腫瘍体積の増加を示すようになった。そこでごの癌細胞の増殖促進に関わる原因遺伝子を探る目的でmRNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、ある増殖因子の特徴的な高発現を認めた。この増速因子のmRNAは腫瘍継代により増加していることがreal-time PCR解析により確認できた。そこでタンパク質レベルでの解析を行うために必要となる抗体の作製を進めた。そしkてこの増殖因子に対する抗ペプチド抗体の作成にも成功した。
今後、この抗体を用いてタンパク質レベルでの発現解析を進めるとともに、癌幹細胞マーカーとの発現ポピュレーション解析を行う.これらにより,腎癌悪性化機構の解明基盤を構築できるものと考える.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

大阪大学医学部泌尿器科ならびに患者様の協力を得て、腎癌術後検体の継代移植腫瘍の作製に成功した。この腎癌患者由来腫瘍の移植(patient-derived xenograft: PDX)マウスにおいて、術後組織検査では判定が困難であった組織型が、継代移植腫瘍では淡明細胞型と判断することができた。また腫瘍継代により、予想通り腫瘍増殖速度が増し、mRNAマイクロアレイ解析によりその原因となる可能性がある増殖因子をとらえることができた。この増殖因子は原発腫瘍ではそれほど顕著な発現が見られていないが、継代により発現が増加し、また癌細胞における機能が明確にされてはいない因子であった。また解析はこれからではあるが、他にもいくつかの特徴的な遺伝子発現もとらえている。
今後、一般的な癌幹細胞マーカーと言われているものとの比較をすることにより、腎癌の悪性化の本態となる癌幹細胞を同定し、さらにこの増殖因子が治療標的分子となる可能性、知財創出の可能性も見えてきたことから、当初の計画以上進展していることと判断した。

今後の研究の推進方策

細胞レベルでの解析を進めるため、腫瘍細胞塊培養により(Cancer Tissue-Originated Spheroid:CTOS)を得る.このCTOS細胞を用いて、癌幹細胞マーカーとされているCD24,CD44, CD105, CD133, c-metの抗体と作製した増殖因子に対する抗体で染色後,フローサイトメーターを用いてポピュレーション解析を行う.さらに、組織切片を作製して、増殖因子に対する抗体での免疫組織学的な解析を行う。これにより集団情報や位置情報が得られる。またこの増殖因子を腎癌細胞株に遺伝子導入後ヌードマウスに移植することにより、癌幹細胞としての総合的評価も行う。
一方、miRNAマイクロアレイを用いた発現解析により、継代に伴い発現が変化するmiRNAの追跡も引き続き計測する。同定されたmiRNAに関して、その阻害剤やmimicを腎癌細胞に導入することにより表現型解析を行う。さらに標的となる遺伝子の同定を介して、腎癌悪性化機序に新知見を得る。

次年度の研究費の使用計画

効果的な助成金使用と効率的な結果の創出を目指した結果、早期に遺伝子を同定することができ、さらに消耗品のキャンペーンをうまく利用することにより、次年度につなげる経費の繰越を可能とした。
次年度はさらにPDXマウスの作製とそれらを用いたmRNA, miRNAの網羅的解析を進めるマイクロアレイ経費に使用する。さらに同定できたmRNA, miRNAの機能解析のため、siRNAや阻害剤、mimic等を購入して効果的に活用し、実績を出す計画である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2014 その他

すべて 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [学会発表] 淡明細胞型腎細胞癌において高発現するmiR-122の機能解析2014

    • 著者名/発表者名
      柏木 悠里, 長谷 拓明, 神宮司 健太郎, 上田 裕子, 北惠 郁緒里, 中田 渡, 藤田 和利, 植村 元秀, 野々村 祝夫, 辻川 和丈
    • 学会等名
      日本薬学会第134年会
    • 発表場所
      熊本大学文学部
    • 年月日
      20140327-20140330
  • [学会発表] 淡明細胞型腎細胞癌におけるmiR-629の高発現と核酸創薬に向けた機能解析

    • 著者名/発表者名
      神宮司健太郎,上田裕子,川上竜司,辻川和丈
    • 学会等名
      第17回日本がん分子標的治療学会
    • 発表場所
      国立京都国際会館
  • [備考] がんの悪性化機構解明と治療標的分子探索

    • URL

      http://www.phs.osaka-u.ac.jp/homepage/b008/

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公開日: 2015-05-28  

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