研究課題/領域番号 |
25670026
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
土井 健史 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00211409)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヒストンメチル化酵素 / SETDB1 / MCAF1 / タンパク質精製 |
研究概要 |
SETDB1とMCAF1の相互作用を調べるために、まずSETDB1の欠失変異体を作製し、全長のMCAF1との複合体形成を免疫沈降実験で調べた結果、SETDB1のN末端から195番目のアミノ酸配列領域までで相互作用することがわかった。これまでMCAF1については、562から817番目の領域がそれに関与することが報告されていたため、この領域とさらに範囲を絞り込んだ567から669番目の領域について、SETDB1の1から195番目の領域との複合体形成を調べた。その結果、MCAF1のいずれの領域もSETDB1の1から195番目の領域と相互作用することが判明した。 そこで次に、これら相互作用しているMCAF1-SETDB1タンパク質複合体の立体構造を明らかにするために、この複合体タンパク質の精製を行った。構造解析が容易なように最小分子同士の複合体を解析することにした。GSTとHisタグを付加したSETDB1分子(1から195番目)と、MCAF1分子(567から669番目)を同時に大腸菌で発現させ、複合体が形成されている状態での精製を試みた。細胞を破砕後、可溶性画分について、NiアフィニティークロマトグラフィーおよびGSTアフィニティークロマトグラフィーを行い粗精製を行った後、プロテアーゼでタグを切断してタグのついていない複合体の精製を行った。しかし、タグがついている時に粗精製ができていた複合体がタグを切ることによって不安定になり、生成物が見られなくなった。そこでタグ付き状態での複合体の精製を行った。この精製タンパク質複合体を用いて結晶化を試みているが、現時点で結晶は得られていない。 一方、SETDB1の構造と機能の解析から、C末端側の修飾が機能と関係することを示唆するデータが得られ、N末端側の相互作用の解析に加え、C末端側の修飾についても創薬標的としての検討の必要性があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度実施計画のSETDB1とMCAF1の相互作用部位の同定と複合体の精製については、予定通り精製方法が確立でき当初到達レベルまで達成できており、結晶化の試みまで至っている。 一方、その過程においてSETDB1分子が修飾を受けることがわかり、またその修飾が活性に関与していることもわかってきた。そこで、当初は創薬の標的をSETDB1とMCAF1に絞って、構造解析とスクリーニング系の確立を計画していたが、創薬標的の視野を拡げる意味から、スクリーニング系の構築を後回しにして、先にSETDB1の修飾を標的とした解析を計画に入れて研究を進めることに変更した。従ってスクリーニング系の構築は、ベクターの作製段階で止まっているが、新たな修飾と活性に関する知見を得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
11.の達成度の部分で記したが、SETDB1とMCAF1の相互作用を標的にした創薬アプローチについては、これまでの計画通り複合体の精製、結晶構造解析をとおして立体構造解析を行うが、別の作用点としてSETDB1のC末端側の修飾についても解析を行い、活性を抑える標的探索を進める。ヒストンメチル化酵素SETDB1タンパク質について、多方面からのアプローチを試みたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験を遂行している中で、SETDB1分子が修飾を受けることがわかり、またその修飾が活性に関与していることもわかってきた。そこで、当初は創薬の標的をSETDB1とMCAF1に絞って、構造解析とスクリーニング系の確立を計画していたが、創薬標的の視野を拡げる意味から、スクリーニング系の構築を後回しにして、先にSETDB1の修飾を標的とした解析を計画に入れて研究を進めることに変更したため、未使用額が生じた。 次年度は、計画通りの複合体の精製、結晶構造解析に加え、新たな計画であるSETDB1のC末端側修飾に着目した新たな標的解析を先行して進めることを計画しており、これらを実行するために使用させていただきたい。
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