ヒストンH3の9番目のリジンのメチル化に関与するSETDB1と、この酵素によるトリメチル化に必要なMCAF1との相互作用について調べた。昨年度は1から195番目のSETDB1と、567~669番目のMCAF1との複合体の精製を試み、不安定な構造のためタグを除去した複合体を得る事ができなかったため、今年度は少し大きい562~817番目のMCAF1を用いて発現、精製を行った。SETDB1(1-195)にGSTタグおよびHisタグを導入し大腸菌で両タンパク質の共発現後、GSTアフィニティクロマトによる精製を行ったところ、MCAF1も含まれていた。これにより複合体として存在している事が判明したため、アフィニティー精製後にタグを切断し、再度アフィニティ精製、ゲル濾過クロマトを行い、複合体を単離する事ができた。現在結晶化のスクリーニングを行っている。 SRTDB1の翻訳後修飾については、動物細胞でSETDB1の発現を行った場合にはSDS-PAGEで2本のバンドが検出されるが、大腸菌での発現では1本しか見られない事から、翻訳後修飾が動物細胞内で行われている事が予想された。また大腸菌で発現された分子は酵素活性がみられない事から、この修飾が酵素活性に重要である事が示唆された。そこで、種々N末端側を欠失させたSETDB1変異体をHeLa細胞で発現させ、翻訳後修飾と酵素活性を調べたところ、N末端から570アミノ酸を欠如しても修飾され酵素活性も有しているが、681アミノ酸を欠如すると、両方とも無くなる事がわかった。そこで、これら2つの変異体について、どのような違いがあるかを質量分析装置を用いて調べたところ、ユビキチン化に違いが見られた。そこで抗ユビキチン化抗体によるウエスタンブロット解析を行ったところ、酵素活性のある変異体(全長分子を含む)は全てユビキチン化されていた。本研究で初めて、SETDB1のユビキチン化と酵素活性との関係を明らかにすることができた。
|