骨髄間葉系幹細胞(MSC)の静脈内投与が、脳梗塞などの脳障害を改善することが報告されているが、その脳保護作用機構、特に、静脈内投与されたMSCが血液脳関門(BBB)を通過し脳実質に侵入するメカニズムについては不明である。申請者はこれまでにインビトロBBBモデルを用い、MSCのBBB通過をリアルタイムで観察する実験系を構築している。本研究では、蛍光タンパク融合機能分子作製と蛍光Ca2+イメージング技術を駆使することにより、MSCがBBBを通過する際の機能分子動態と細胞内情報伝達を可視化し、MSCのBBB通過機構を解明することを目的とする。青色蛍光タンパク質msECFPを発現させることによりMSCの細胞動態を、黄色蛍光タンパク質Venusとの融合タンパク作製により脳血管内皮細胞膜上に発現しタイトジャンクションに関与するclaudin-5の分子動態を、赤色蛍光Ca2+イメージングタンパク質R-GECOを用いることにより細胞内Ca2+動態を、三者同時に観察できるリアルタイムイメージング系を構築した。実験の結果、MSCのBBB通過は、タイトジャンクション形成の程度、すなわち、BBBバリア機能に影響されることを示唆する観察結果が得られた。そこで、BBBバリア機能に影響を及ぼす因子の同定を行った。BBBバリア機能に影響を及ぼすことを示唆するデータが得られたアストロサイトおよびペリサイト条件培地について、含有されるタンパク質を抗体アレイにより網羅的に解析した。条件培地中に含有されるタンパク質のうち、免疫・炎症系あるいは血管系への作用が報告されているタンパク質についてBBB機能への影響を検討したところ、IL-6ファミリーに属するLIFがBBBバリア機能を減弱させることが明らかとなった。
|