研究概要 |
神経幹細胞はさまざまな様々な分化制御を受け中枢神経系細胞(神経細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイト)を生み出す多分化能と自己複製能を有する細胞と定義される。しかし、神経幹細胞において、特定の神経細胞への形質転換以前に一部運命付けられていることを示す知見が得られてきた。特に、当研究室で開発したマウスES細胞からセロトニン神経を分化させるマトリゲル-noggin法(Shimada, et al. J Neurochem 2012)では、神経幹細胞になる以前にBMP/TGF-bシグナルを制御することで、セロトニン神経の分化が促進することを見いだしている。そこで、この分化初期にBMP/TGF-bシグナル制御による5-HT神経分化誘導作用が, 他の神経分化誘導法においても同様にみられる普遍的なものであるかどうかを明らかにするため、さまざまな神経分化誘導法を用いて、セロトニン神経分化効率を解析した。その結果、SDIA法によるセロトニン神経分化誘導法でも、分化初期にnoggin(BMPシグナル阻害)により、セロトニン神経分化が有意に増加した。さらに、ドパミン神経分化誘導法においても、分化初期にnogginを処置するだけで、ドパミン神経分化には影響を与えずに、セロトニン神経分化を有意に促進させた。これらのことから、神経幹細胞よりも以前にBMP/TGF-bシグナルを制御することで、その後の運命決定に偏りが生じている可能性が示唆された。
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