研究課題
挑戦的萌芽研究
アポトーシスを起こした細胞が速やかに除去(貪食)されない場合、細胞内成分の漏出が起き炎症反応が引き起こされる。そのため、生体内にはアポトーシス細胞を速やかに貪食する機構が備わっている。これまでに、貪食経路として3種が報告されている。申請者は、Gタンパク質共役型受容体キナーゼ(GRK)が、報告されている経路とは独立してアポトーシス細胞の貪食を仲介することを見出した。GRKはアゴニストの結合したGタンパク質共役型受容体を選択的にリン酸化するキナーゼである。GRKは7種のサブファミリーに分かれ、このうち貪食を仲介するのはGRK2とGRK6であった。また、GRK2とGRK6のうち、GRKのリン酸化(キナーゼ)活性依存的に貪食を促進するのはGRK6のみであった。したがって、GRK6はタンパク質のリン酸化を介して貪食を仲介していると結論づけられた。そこで、GRK6が相互作用する相手を同定するためにスクリーニング系を構築することを試みた。相互作用を検出する方法としていくつかのアプローチがある。近年頻繁に行われているのは2種の励起波長の異なるGFP変異体を用いるFRETと呼ばれる方法である。しかしながら、FRETではGRKとタンパク質との相互用は検出できないことが明らかになった。GFPの代わりにルシフェラーゼを用いるBRETも、付加させるタンパク質の分子量が大きいため、評価系としてはFRETと同じように不十分であると思われた。そこで、GFPを2つに分けたスプリットGFPを用い相互作用を検出できるか検討した。すでに相互作用することが報告されているいくつかのタンパク質との相互作用を検討すると、弱いながら相互作用を検出することができた。今後、未知のタンパク質との相互作用を検出できるまでに感度を上昇させる。
3: やや遅れている
感度よく相互作用を検出できるプローブの作成に、当初予定していた期間以上の時間を取られた。今後、スピードを上げるとともに残されたin vivoでの役割についても解析する予定である。また、プローブを作成する過程で、思ってもみなかった知見を得ることができ、こちらの研究も同時に進行していく予定である。
GRK6と相互作用するタンパク質を効率よくかつ感度よく検出するにはスプリットGFPプローブの改善が必要である。この目的のため、リンカーの長さをいろいろと変えた(最大100アミノ酸まで)プローブを作成する。リンカーを長くすることで、バックグランドを減少させるととともにシグナルの強度を増強できると報告されている。また、プローブがうまく働かない場合を考えて、shRNAライブラリーを用いたスクリーニングも開始する。プローブの作成とは別に、スプリットGFPのプローブがGRK6と相互作用するタンパク質を検出できるか検討する過程で、研究室に存在していた各種シグナリングとの相互作用を検討したところ、新たにGRK6がSmad6と相互作用することを見出した。しかしながら、この相互作用が生理的な結合を反映しているのか、Smad6の作用発現にGRK6が関与しているのかなど多くの点が明らかではない。そこで、Smad6の活性を評価すためにBRE-Lucを利用し、TGF-βまたはBMP刺激によるSmad6の活性化にGRK6がどのように影響するのか検討する。また、これらの刺激によるSmad6活性の上昇に対するキナーゼ活性欠損型GRK6の効果を検討し、GRK6の効果がキナーゼ活性依存成果についても検討する。次に、Smad6を介する生理的な応答としてブレオマイシンによる肺の線維化を検討する。ブレオマイシンによる肺傷害およびそれに続く線維化が、野生型およびGRK6ノックアウトマウスの間で異なるのかを検討することで、GRK6とSmad6との相互作用のin vivoでの重要性を明らかにする。
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Nat. Commun.
巻: 4 ページ: 1532