研究課題/領域番号 |
25670041
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
齊藤 真也 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (80271849)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 皮膚血管 / 温度感受性 / ラット尾動脈 / ラット総腸骨動脈 / KB-R 7943 / Na/Ca交換体 / α1受容体 |
研究実績の概要 |
神経因性疼痛は難治性疾患で、患者のQOLを著しく低下させている。疼痛の発生機序もさることながら、症状を悪化させる因子の見極めも重要である。神経因性疼痛は循環障害も併発しており、交感神経に対する皮膚血管の過剰な応答であると解釈されているが、科学的なエビデンスはほとんどない。そこで本課題では、疼痛モデルラットにおける皮膚血管の収縮応答性が亢進するメカニズムの解明を目標としている。本年度はまず摘出ラット尾動脈とその上流にある総腸骨動脈において、神経による収縮制御が異なるかどうかを検討したところ、両血管ともチラミン誘発性収縮の大きさは同程度であることが示された。一方平滑筋収縮を引き起こすα1受容体サブタイプの違いを比較したところ、尾動脈の方がα1A受容体に依存した収縮が大きいことが明らかとなった。また昨年度にフェニレフリン(PE)誘発性収縮において、皮膚血管では電位依存性Caチャネル(VDCC)に対する依存度が低いことを明らかにしたことから、本年度は、神経因性疼痛モデルである絞扼性神経損傷(chronic constriction injury: CCI)ラットを作製し、摘出足底動脈において、受容体作動性Caチャネル阻害薬およびVDCC阻害薬存在下でのPEに対する反応性を、術足側と正常足側で比較したが、いずれの場合も術足側血管の方が正常足側血管よりも感受性が亢進したままであった。そこで血管平滑筋のCa排出経路として知られているNa/Ca交換体(NCX)の阻害薬KB-R 7943存在下で比較したところ、濃度反応曲線に差が見られなくなった。これはKB-R 7943によった術足側に比べて正常足側で大きく反応曲線が左にシフトしたためである。このことから、CCIラットでは何らかの機構により、NCXによるCa排出機能が低下することにより、収縮刺激に対する応答性が亢進している事が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25~26年度の研究で、神経支配とその下流のα1受容体刺激に対する皮膚血管の性状を明らかにしたことで、目標(1)は予定通り達成できた。また、CCIラットを作製し、摘出足底動脈を用いた実験から、神経傷害による血流低下は従来示唆されてきたようなα1受容体の発現量増加ではなく、NCXを介した細胞内Caの排出能が低下したためであることが示された。まだNCXの活性が変化するメカニズムが明らかにはなっていないが、目標(3)を遂行する上でNCXが重視されるべきであることが明らかになったことが最大の収穫である。したがって目標(2)についても予定通りに進んでいると言える。目標(3)については現時点でCCIマウスの作製は成功しており、最低限の到達目標は達成された。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き神経傷害によってNCX活性が変化するメカニズムの解明を行っていく。可能性としては(a) NCXの発現量低下、(b)NCXの形質膜への移行量の変化、(c)NCXと共役するチャネルやトランスポータ活性の変化、が挙げられる。これらの結果から、神経傷害性血流低下反応を引き起こす原因を同定する。またこの知見をもとに、in vivoにおいて、CCIマウスに対して血流低下の原因に対する特定の阻害薬を投与し、血流低下の緩和および疼痛反応の緩和に対する効果を検討する。また、両緩和効果が知られているカルシトニン受容体作動薬の作用が、血流回復によって得られているかどうかも検討し、疼痛緩和に対する血流回復のアプローチの正しさを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
直接経費900,000円の予算をオーバーしないよう節約をした結果約0.5%分にあたる4,692円が残った。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度計画では当初1,000,000円を予定していたが、これに残額を加え、1,004,692として計画する。しかし、当初計画の0.5%弱の増額であるので、むしろ引き続き、節約に努める。
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