研究課題/領域番号 |
25670042
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
荻田 喜代一 摂南大学, 薬学部, 教授 (90169219)
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研究分担者 |
米山 雅紀 摂南大学, 薬学部, 講師 (00411710)
芝 達雄 摂南大学, 薬学部, 助教 (00634958)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 内耳 / 感音難聴 / 音響外傷ストレス / 酸化ストレス / コネキシン / カルパイン |
研究概要 |
内耳障害が引き起こす感音難聴の多くは不可逆性であり、根本的な治療法は確立されておらず、世界的な社会問題となっている。感音難聴の一部は、各種ストレスにより惹起されることが知られる。我々は、拘束水浸ストレス、隔離ストレス、高血糖ストレスおよび音響ストレスによる難聴の発症の有無を確認したところ、拘束水浸ストレスおよび隔離ストレスでは聴覚障害および脆弱性がみられなかったが、糖尿病モデル動物で聴覚脆弱性がみられ、音響ストレスで明らかな難聴が発症した。そこで今年度は音響ストレス誘発性難聴に関して解析を進めた。音響外傷性難聴モデル動物および初代蝸牛外側壁由来線維細胞を用いた研究において、強大音響曝露誘発性有毛細胞障害に先立って、蝸牛外側壁線維細胞のギャップ結合構成蛋白質コネキシンの細胞内局在変化および分解が酸化ストレスを介して惹起されることを見いだした。また、蝸牛内において有毛細胞の機能発現には蝸牛の内リンパ液のカリウムイオン濃度の維持が重要であり、コネキシンは外側壁線維細胞間でのカリウムイオン輸送を司ることにより内リンパ液のカリウムイオン濃度を維持している。したがって、コネキシンの分解消失が有毛細胞障害に先立って起こる知見は、蝸牛外側壁線維細胞の酸化ストレスによる内耳内イオンバランスの破綻が有毛細胞障害の原因の一つであることを示唆するものである。さらに、コネキシン関連ギャップ結合の裏打ち蛋白質としてカテニンを同定し、カテニンを分解基質とするカルシウム依存性システインプロテアーゼ(カルパイン)の活性化がコネキシンの細胞内局在変化と分解を誘発することを明らかにした。このように、感音難聴の発症機序の一つに酸化ストレスによるカルパインの活性化が関与することが推察される。本シンポジウムでは、カルパイン阻害薬の音響外傷性難聴の保護作用についても報告する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種ストレスによる難聴を解析したところ、音響ストレス誘発性難聴が確立でき、その発表メカニズムに酸化ストレスが関与することが見出された。また、内耳外側壁線維細胞のギャップ結合の重要性も明らかとなった。したがって、概ね順調に成果が出ている。しかしながら、他の心的ストレスでは難聴を誘発できないことから、ヒトで考えられる心的ストレスと聴覚障害との相関性については不明である。今後、心的ストレスによる聴覚障害の有無について解析し、ストレス性難聴の全貌を解明する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
拘束水浸ストレスおよび隔離ストレスでは聴覚障害や内耳有毛細胞の脆弱性がみられなかったことから心的ストレスでは聴覚障害がみられない可能性がある。今後はステロイド連続投与動物、副腎摘出動物、ACTH連続投与動物について聴覚障害の有無を解析し、HPA系と聴覚障害の関連性について解析を進める。また、糖尿病動物で内耳有毛細胞の脆弱性がみられたので、その脆弱性のメカニズムについて解析する。さらに、音響外傷モデル動物について音響による難聴発症メカニズムと治療薬のスクリーニングを実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度は、モデル動物の作製に研究時間の多くを割いたために、必要な機材や試薬等は既存のものでまかなうことができた。そのため、必要経費のほとんどが実験動物であり、高価な試薬や備品等ではなかった。そのため、多くの経費を繰り越すこととなった。 平成26、27年度は、モデル動物の詳細なる解析が必要となる。特に、特定タンパク質や遺伝子の発現変化等の解析に必要な抗体、遺伝子等の購入を計画している。また、培養細胞を用いた解析では、遺伝子導入等で必要な試薬や機材の購入を計画している。
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