研究課題/領域番号 |
25670042
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
荻田 喜代一 摂南大学, 薬学部, 教授 (90169219)
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研究分担者 |
米山 雅紀 摂南大学, 薬学部, 講師 (00411710)
芝 達雄 摂南大学, 薬学部, 助教 (00634958)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 内耳 / 感音難聴 / 音響外傷ストレス / 心的ストレス / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
【目的】感音性難聴発症は過剰な心身ストレス負荷が原因の一つであると考えられているが、その因果関係は十分に明らかにはなっていないのが現状である。本研究では、ストレスと聴覚障害の関連性を解明する目的で、各種ストレス(強大音響、水浸拘束、社会的隔離、社会的敗北)負荷後の聴覚変化についてマウスを用いて解析した。【方法】5週齢ddY系雄性マウスを用いて強大音響ストレス(8 kHz, 90-110db, 1時間)、水浸拘束ストレス(1日3時間、 2週間)、社会的隔離ストレス(4週間)、社会的敗北ストレス(1日10分、2週間)を負荷し、それぞれ負荷3時間後に聴力測定を行った。水浸拘束ストレス、社会的隔離ストレス、社会的敗北ストレスについては、最終負荷後に音響曝露(8 kHz, 90 dB, 1 h)を行い、曝露一定日数経過後に聴力を測定した。また、ファロイジン染色により有毛細胞数を計測した。【結果】強大音響ストレスは、音圧依存的な聴力の悪化および有毛細胞の脱落を示した。水浸拘束ストレス負荷群では胃内の出血痕を認め、社会的隔離ストレス負荷群および社会的敗北ストレス負荷群はケージ内で飛び跳ねるなどの興奮行動を示した。しかしながら、水浸拘束ストレス負荷、社会的隔離ストレス負荷、社会的敗北ストレス負荷では、いずれも聴力および有毛細胞数に著変が観察されなかった。また、これらのストレス負荷後の音響曝露でも聴力に変化は認められなかった。【考察】以上の結果より、強大音響ストレスのような局所ストレスは内耳障害を惹起させたが、全身的傷害性ストレスや心的ストレスでは聴覚障害は惹起されないことが判明した。これらのことは、少なくともマウスでは心的ストレスが感音難聴の発症に無関係であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の実験計画は概ね順調に進行しており、一定の成果をあげている。しかし、一部に予想した結果とは異なる研究成果が得られたことから、新規実験計画も加えながら研究を進める予定である。特に、マウスを用いた場合には心的ストレスによる難聴は惹起されないことが明らかとなったため、今後の研究計画に示したような研究計画の変更を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように予想とは異なる研究成果が得られたので研究計画の変更を検討している。すなわち、心的ストレスによる難聴モデルの作成を目指したが、用いた実験動物(マウス)では作成できないことから、高血糖ストレス(糖尿病)や内耳局所の酸化ストレスのモデル動物を用いて聴覚障害メカニズムの解明を進める。本研究ではこれらのモデルで聴覚障害や内耳脆弱性を示すことをすでに明らかとしており、本モデルを用いた研究を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果が予定とおりではなかったために、実験計画の策定変更を行った。次年度の研究費用がかさむ可能性を考えて次年度に使用額を増やす必要がある。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度(最終年度)は新規研究計画のために必要な試薬等の購入に使用する。
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