研究実績の概要 |
生薬ウコンの主成分curcuminをシード構造として当研究室で見出されたbis(arylmethylidene)acetone構造を特徴とする抗腫瘍活性化合物(C5-curcuminoids)の精密な構造活性相関を行い、本化合物群の創薬化学的可能性を検証した。検討の結果、2つのベンゼン環をつなぐ1,4-pentadien-3-one構造が抗腫瘍活性発現にとって本質的な構造単位であることを明らかにした。また、ベンゼン環上の置換基は10オングストローム程度のサイズまで活性が保持されること、置換基には水素結合供与基を含まない方が良好な活性を与えることを明らかにした。その一方で、ベンゼン環上に1,3-メチレンジオキシ基を有する誘導体では著しく活性が減弱するという興味深い知見も得られた。また、マイケル付加反応剤の中で、特に優れた反応性を示すチオール類について、GO-Y030を用いて反応性を検証した結果、チオールに置換する基の立体電子効果が逆マイケル反応の速度に決定的な影響を与えることを突き止めた。本検討によって、1級アミンが逆マイケル反応の触媒として機能することも確認された。この結果は、bis(arylmethylidene)acetoneのケトンカルボニル基が1級アミンと反応して形成するイミンあるいはイミニウム構造が逆マイケル反応を加速していることを示唆している。1,4-Pentadien-3-one構造への電子求引基の導入によるマイケルー逆マイケル反応の加速にもとづく抗腫瘍活性の上昇を期して新規誘導体を種々合成したが、置換基の立体障害のためか、活性は軒並み低下した。このことから、1,4-pentadien-3-one構造は抗腫瘍活性発現にとって最適なファルマコフォアとなっていることが再確認された。
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