研究課題
これまでの我々の検討により血管内皮細胞特異的受容体Robo4は血管内皮細胞の炎症に促進的に寄与することが示唆されている。そこで今回、Robo4を標的とする新しい炎症治療戦略の確立を目指し、Robo4機能や発現を抑制する、抗体と核酸の作製を行った。まず、Robo4に結合する5種の抗体を準備し、これらが炎症下の内皮細胞におけるIL-6産生に影響を与えるかついて解析した。その結果、全ての抗体は内皮細胞におけるIL-6産生に影響を与えなかった。この結果からRobo4抗体はRobo4下流の炎症促進シグナルに影響を与えないことが示唆された。次に、Robo4発現を抑制する核酸としてRobo4 siRNAを用いて同様の検討を行った。その結果、Robo4 siRNAは炎症下の内皮細胞におけるIL-6産生を有意に抑制し、内皮細胞の炎症応答を抑制することが示された。この抗炎症効果をin vivoで評価するために、Robo4 siRNAをマウスに投与したが、肺血管におけるRobo4 mRNAの発現はsiRNA投与6時間後には抑制されているものの、12時間後には投与前と同レベルに回復していた。この結果から、siRNAでは長時間Robo4発現を抑制できないことが示されたため、酵素耐性に優れた人工核酸(bridged nucleic acid)を含むアンチセンス核酸を用いることとした。10種のアンチセンス核酸(AS1-AS10)を合成し評価したところ、AS-10がヒトとマウスの両内皮細胞においてRobo4の発現を有意に抑制することが明らかになった。さらにAS-10のマウスへの投与は、肺におけるRobo4発現を投与24時間後まで持続的に抑制する傾向がみられ、AS-10がRobo4を標的とする炎症治療薬の候補分子となる可能性が示された。
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