研究課題/領域番号 |
25670058
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
大高 章 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (20201973)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | タンパク質ラベル化 / チオエステル / ケミカルバイオロジー / N-Sアシル転移 |
研究概要 |
生理活性物質の標的の多くはタンパク質分子である。生理活性物質いわゆるリガンドの標的タンパク質への結合を通じて、標的タンパク質の機能を探る研究は極めて重要な研究課題である。この目的達成のための基盤技術の一つに、リガンドー標的タンパク質相互作用を基盤とするタンパク質分子の選択的修飾がある。さて、この相互作用によるタンパク質の標識は、反応性を有する標識試薬の”リガンドータンパク質”相互作用に基づいたタンパク質表面への標識試薬の選択的濃縮効果によるものである。しかし、標識試薬自身は常の活性化された状態にあるためリガンドータンパク質選択的相互作用が介在しない非特異的タンパク質標識が避けられない。この問題を解決するため、リガンドータンパク質相互作用を契機として標識試薬が活性化されるようになればよいのではと考えた。すなわち標識を従来の濃縮効果のみに頼るのでなく、濃縮効果と活性化効果という“Dual Effect"に頼るという考え方である。これを達成するためチオエステル前駆体として開発を続けてきたN-sulfanylethylanilide (SEAlide)ユニットを応用することにした。SEAlideは通常アミド型として不活性な分子であるが、酸塩基触媒の存在によりN-Sアシル転移によりチオエステルへ活性化され求核性官能基をアシル化する能力をもつ。当該年度においてはSEAlideを基盤構造とするSEAlide-based labeling tag (SEAL-tag)を開発し、タンパク質への蛍光色素の導入を指標にラベル化実験を行った。エノラーゼあるいはCOX-1へのリガンドを有するSEAL-tag分子を合成し、それぞれのタンパク質が夾雑物存在下においても選択的にラベル化されることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エノラーゼ、COX-1に対するリガンドを有するSEAL-tag分子の合成を行い、これらの試薬を利用することでそれぞれのタンパク質を選択的に修飾することに成功した。また、この修飾反応にはSEAL-tag分子の活性化およびリガンドータンパク質相互作用という2つの効果が必要であることを明らかにした。この点において研究はほぼ順調に進展していると判断している。しかしながら、修飾効率などはいまだ不十分でありさらなる検討が必要であるとともに、本研究課題においてポイントとなるリガンドータンパク質相互作用を契機とした試薬の活性化が十分に検証されていない点などが今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
リガンド-タンパク質相互作用を契機とした新たな修飾試薬としてのSEAL-tag分子の開発については一応の成功を収めていると判断している。しかしながら反応効率などはまだまだ低く今後の改良が必要である。そこで、今後の検討課題として次の点を推進する予定である。 SEAL-tag分子の活性化効果の検証 より効率性の高いSEAL-tag分子の合成 ラベル化部位の確認 これらを通じて、より反応効率が高く、選択性の高い、真に実用的な標的タンパク質ラベル化試薬の開発を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
既存の器具や試薬を使用することができ、消耗品費が抑制されたため。 翌年度分と合わせ、各種試薬や器具を購入するための費用に充てる計画である。
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