蛋白質ペプチド結合異性化酵素Pin1は、蛋白質のリン酸化セリンあるいはリン酸化スレオニンとプロリンの間のペプチド結合を異性化する特異な酵素であり、老化に関わる蛋白質やがんに関わる蛋白質を基質とすることから注目されているが、阻害剤の検討が進んでおらず、検討課題となっている。今回、ペプチド結合の異性化の活性化エネルギーが、ペプチドカルボニル基の硫黄類縁体(チオアミド体)では、通常のペプチド結合より大きいことに着目し、基質類似ペプチドのペプチド結合のアミド結合をチオアミド結合へと変更した新しい基質類縁体を合成し、Pin1酵素活性への影響を評価した。 その結果、人工Pin1基質であるペプチドの酵素認識部位にあるアミド結合(グルタミン酸ープロリン結合)をチオアミド結合に変更したところ、酵素活性が減弱することが示された。このことから、チオアミド体は酵素のメカニズムに基づいたユニークな阻害剤として機能する可能性があることが示された。
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