研究課題/領域番号 |
25670062
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
三隅 将吾 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (40264311)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | HIV / 逆転写過程 / 根治療法 |
研究概要 |
HIV-1の複製を制御する細胞性因子を同定する過程で、HIV粒子内にGAPDHが取り込まれていることを明らかにした(Retrovirology (2012) 9: 107.)。その役割を解析したところ、「GAPDHはHIV逆転写過程のプライマーとして機能するtRNALys3のウイルス粒子内取り込み量を減少させ、ウイルス複製を負に制御する因子」であることを明らかにした。リジルtRNA合成酵素(LysRS)と複合体を形成しているtRNALys3は、HIVの前駆体タンパク質に結合して粒子内に取り込まれ、HIVの逆転写過程に必須の分子であることが知られているが、GAPDHはその取り込みそのものを阻害していることを明らかにした。つまり、HIVの逆転写過程そのものを阻害できる治療薬を開発できる可能性を秘めている。我々は、変異を獲得しやすい逆転写酵素といったウイルスタンパク質の活性を直接阻害する抗ウイルス剤を開発するのではなく、宿主細胞性抑制因子GAPDHの機能を利用して逆転写過程そのものを阻害する新たな治療戦略を創造したいと考えた。本年度の実績として、GAPDHのHIV粒子内tRNALys3取り込み阻害機構の解析の結果、GAPDHのC末端領域がウイルス前駆体タンパク質と相互作用することが明らかにできた。現在、変異体を用いた解析により相互作用に必要な残基の検討を行っている。変異体の作製は、GAPDHおよびGAGタンパク質ともほぼ完了し、阻害用様式のモデルを現在作成している。まとまり次第、論文および知財獲得のための準備を進める予定にしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
具体的な研究計画として、1) GAPDHのHIV粒子内tRNALys3取り込み阻害機構の解明、2) GAPDHとHIV構造タンパク質標的ドメイン間のin silico構造解析、3) GAPDHのtRNALys3取り込み阻害機構を模倣した抗HIV剤の探索と抗HIV活性評価の3点を計画している中で、結合に必要な残基も特定が出来たため、1)の阻害様式はモデルとして提唱でそうである。また、すでにin silicoによる構造解析は進めていたことから、より実質的なGAPDHとGAGタンパク質の結合様式を提唱できつと考えている。最終的に、逆転写過程を根本的に阻害できる薬剤の探索につながればと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
GAPDHのtRNALys3取り込み阻害機構を模倣した抗HIV剤の探索と抗HIV活性評価を計画している。計画書に則り、組換えGAPDHとGAPDH標的ドメインの組換えGagタンパク質の相互作用が阻害されるかELISAレベルで解析する。さらに、HIV持続感染細胞に直接候補化合物を投与し、培養上清に放出されたウイルス粒子内のtRNALys3量をqPCRを用いて定量する。なお、定量用のプライマー等はすでに設計済み。最終的に、候補阻害剤を用いて、ウイルス複製阻害能をTzm-bl細胞を用いて評価する。
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