研究課題
母乳には免疫グロブリンA (IgA)が分泌され、乳児の腸管粘膜からの病原体や毒素の侵入を粘膜表面で阻止している。抗体医薬や高次機能性食品としての利用を展望し、経口投与できる分泌型IgAの有用性を研究するため、ベロ毒素(Stx1)に対する組換え型IgAを発現する植物を作製した。IgA抗体のH鎖、L鎖、J鎖および分泌片を一つのバイナリーベクターに組み込み、アグロバクテリウム法にてモデル植物シロイヌナズナおよび実用植物リーフレタスにて分泌型IgAの発現に成功した。シロイヌナズナに発現させた植物抗体は、Vero細胞のStx1による細胞傷害を試験管内で中和した。植物抗体による毒素中和活性を生体内で調べるため、マウス肛門よりStx1を投与し、大腸上皮細胞の傷害を検討した。昨年度までの検討によりTUNEL法によっては上皮細胞の傷害が十分に示されなかったが、今回活性型caspase-3の免疫組織染色によって、アポトーシス誘導の初期過程を観測できた。これにより、in vivoで毒素中和活性を評価する一つの手段が得られた。一方、経口投与したIgAが、大腸に届くのかどうかを評価するため、Stx1のBサブユニット(Stx1B)に特異的マウスモノクローナル抗体G2G7(2量体IgA)を経口投与して、糞中から活性のあるIgAの検出を試みた、その結果、確かに固相化Stx1Bに結合活性のあるIgAがELISAで検出された。G2G7は毒素中和活性がないため、中和活性のある分泌型植物抗体を用いて今後検討を進める予定である。植物での発現部位については、葉の超薄切片を用いた観察から、トランスジェニック植物において特異的に細胞質内にプロテインボディーを見出した。金コロイドを用いた免疫電子顕微鏡法によって、プロテインボディー内にIgAのH鎖および分泌片の存在を明らかにした。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
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