研究課題/領域番号 |
25670064
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 日本薬科大学 |
研究代表者 |
根岸 和雄 日本薬科大学, 薬学部, 教授 (70116490)
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研究分担者 |
木村 道夫 日本薬科大学, 薬学部, 准教授 (50349578)
根岸 友恵 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (80116491)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 紫外線 / 水付加 / ピリミジン / DNA / RNA |
研究概要 |
重水中の紫外線照射によるシトシン5位水素の重水素への置換を指標として光水付加反応をモニターするプロジェクトについては、紫外線照射したデオキシシチジンを用いて NMR のデータ とTOF-MSのパターンを比較した。その結果、NMRの結果から予想される比率に対応した割合で質量数が1多いピークがTOFMSチャート上で観察された。このことから、TOFMSにより重水素交換反応を推定できる可能性が示唆された。そこで、まずDNAを重水中で紫外線照射し、酵素消化してヌクレオシドとした後、TOFMSを行ってデオシキシチジンの質量変化を分析したが、確定的な結果は得られなかった。そこで、より明確な結果を得るため、および紫外線によるピリミジン二量体生成の影響を排除する目的も兼ねて隣り合ったピリミジン塩基を持たない配列のオリゴヌレオチドを用いた実験を行った。これを重水中で紫外線照射し、酵素消化後TOFMSで分析すると、デオキシシチジンのピークにおいて、紫外線照射に伴って質量数が1多いピークが出現することが示された。これによりTOFMSによる水付加反応評価が可能であることが示された。また、ピリミジン二量体とは無関係に重水素置換が起きることも示している。より安定なウラシル、チミン付加体を含むヌクレオシドトリリン酸の性質を調べる研究は、本年は収率が高いUTPを用いる実験を行った。UTPに紫外線照射を行ってほぼ100%水付加体(hohUTP)となったサンプルを用意し、試験管内RNA合成系にUTPの代わりに加え、RNA合成が起こるかどうか調べたところ、RNA合成は全く起こらなかった。そこで、種々の割合でUTPとhohUTPを加えた系でRNAを行い、生成物を電気泳動で解析したところ、正常サンプルとは異なる泳動パターンを示す生成物が観察された。これは、hohUTPが取り込まれ異常なRNAができた可能性を示す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は2つの課題を設定している。一つはDNA中でのシトシン塩基に対する紫外線による水付加反応をモニターする方法の開発である。我々は使用法が簡便なTOFMSの利用を計画した。その結果、DNAレベルではまだ成功していないが、その一部の構造を取り出したと考えられるオリゴヌクレオチドで方法の有用性を確認することができた。もう一つはより安定なウラシル(チミン)型のヌクレオチドを用いてトリリン酸レベルで性質を調べる研究である。こちらは、チミン型はひとまず置き、収率が高いウラシル型の物質であるUTPについて実験を行い、RNA合成系での挙動を詳しく調べることができた。以上のように、実行できていない項目もあるが最重要の項目について進展しているので、おおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
オリゴヌクレオチドの実験をふまえて、重水中でDNAを紫外線照射し、デオキシシチジン5位の重水素交換を測定する方法の確立を進める。UTPの生成物についてはRNA中に取り込まれたかどうかをきちんと評価したい。その他の点については、当初の計画通りに研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
DNA合成系を用いた実験を行わなかったため、試薬品費等が未執行となったため DNA合成系を用いた実験を行って使用する。
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