研究課題
DNAの紫外線照射により起こる水和反応を、シトシン5位の重水素置換反応により検出できるかどうかをさらに検討した。短いオリゴヌクレオチドを用い、これを酵素で分解しTOF-MSを用いた分析で検出が可能であることが示されたので、そのDNAへの応用を試みた。重水中で紫外線照射したDNAを分解してヌクレオシドとし、これをTOF-MSで分析した。その結果、重水素置換によりデオキシシチジンの分子量が増加したと思われるピークが増大していることが確認された。今後定量的な測定ができるように、精度を上げていきたい。また、より効率の良い分析法として、酵素分解の代わりに、酸分解により、塩基の形でモノマーを得て、これをTOF-MSで分析する手法も検討した。重水中で照射したDNAを乾燥させ、これを密閉容器中で加熱処理して、塩基まで分解した。これをTOF-MSで分析したが、期待した結果は得られなかった。これは、塩基の状態では、ピリミジン環5位の重水素が不安定である可能性を示唆している。重水素置換のメカニズムや効率は未だ充分には解明されていないので、所期の目的とは異なるが、興味深い可能性が示唆されたものと考えている。DNAやRNAへの作用を考えるとき、もっとも影響があると考えられるのは、RNA中のウリジンである。そこで、大腸菌tRNAに紫外線照射を行い、酵素消化によりヌクレオチドとし、逆相HPLCで分析した。15分間の紫外線照射でウリジンのピークは46%まで減少し、より保持時間の短いピークが増加した。後者のピークはウリジン光水和物と推定される。モデル反応としてウリジンに紫外線を照射して検討したところ、同様に変化が起き、加熱によりウリジンに戻る可逆性が証明された。また、重水中で照射を行うと、重水素交換が起きることも確認している。
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日本薬科大学教育紀要
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Mutagenesis
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