研究課題/領域番号 |
25670066
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
梶原 直樹 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 主任研究員 (70453917)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | インフルエンザ / H5N1 / 高病原性 / ヘマグルチニン |
研究概要 |
1997年に、高病原性トリインフルエンザウイルス(H5N1)の最初のヒト感染例が香港で報告された。H5N1感染者の多くは劇症型の急性呼吸促迫症候群を呈し、呼吸不全で死亡する。その致死率は約60%と非常に高く、H5N1は世界中に伝播していることから、そのパンデミックが懸念されている。そのため、H5N1の感染性や高病原性の機序の解明が緊急の課題である。 平成25年度は、「H5N1が感染する細胞種の同定」および「H5N1の新規感染経路の分子機構の解明」を試みた。免疫系細胞及び肺の間質細胞に焦点を当て、ヒトまたはマウス由来の各種細胞に蛍光標識ペプチドを処置した時の細胞内移行について検討した。解析には、蛍光顕微鏡とフローサイトメーターを使用した。蛍光標識ペプチドは浮遊系細胞と比較すると、接着系細胞に効率的に取り込まれた。蛍光標識ペプチドの細胞内移行は培養細胞だけでなくマウス脾細胞でも確認でき、培養細胞と同様の傾向が観察できた。また、蛍光標識ペプチドをマウスに経鼻吸入させ、ペプチドが肺内に分布することも確認した。蛍光標識ペプチドの細胞内移行は低温条件下、酸性条件下、マクロピノサイトーシス阻害剤の前処置によって有意に抑制された。一方で、シアリダーゼを前処置した細胞においてもシアリダーゼ未処置の細胞と同程度に細胞内移行が観察された。これらのことから、シアル酸非依存的な生理的取り込み機構が関与していることが示唆された。 本研究成果は、H5N1の感染性や高病原性の理解に貢献し、未だ有効な治療法が確立されていないH5N1感染対策に対して新たな知見をもたらすことが強く示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、H5N1の新規感染経路の分子機構の解明など基礎的研究を遂行するとともに、H5N1感染に対する新規治療薬として臨床応用へ発展させるための基盤を確立することを目的とする。平成25年度は前述の通り、「H5N1が感染する細胞種の同定」および「H5N1の新規感染経路の分子機構の解明」に取り組んだ。しかしながら、当初の研究計画を完遂することができなかったため、「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は引き続き、「H5N1が感染する細胞種の同定」および「H5N1の新規感染経路の分子機構の解明」で残された課題を追究する。具体的には、「H5N1が感染する細胞種の同定」では、組換えタンパク質やウイルスにおいても蛍光標識ペプチドと同様の結果が得られるかどうかを検証する。「H5N1の新規感染経路の分子機構の解明」では、シグナル伝達経路などを調査する。また、当初の研究計画に従って「H5N1感染時の宿主細胞応答の解析」を行い、「H5N1の新規感染経路と重症肺炎病態との関連」についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画していた課題を平成25年度中に完遂できなかったため、次年度使用額が生じた。具体的には、組換えタンパク質実験が計画通りに進まなかったことや、ウイルスの入手に時間を要したためである。 生じた次年度使用額については、次年度中に使用する。 使用目的に変更は無く、平成25年度中に解決できなかった課題のために使用する。
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