研究課題/領域番号 |
25670066
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
梶原 直樹 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 主任研究員 (70453917)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | インフルエンザ / H5N1 / 高病原性 / ヘマグルチニン |
研究実績の概要 |
我々は、高病原性トリインフルエンザウイルス(H5N1)のヘマグルチニン内に細胞内移行を引き起こす配列を見出した。本年度は引き続き、「H5N1の新規感染経路の分子機構の解明」に取り組んだ。 我々が発見した細胞内移行能は、細胞によって強弱がある。具体的には、KU812細胞では強く、HL-60細胞では弱い。また、HL-60細胞においては、細胞内移行を示す群と、まったく示さない群が存在する。これらの結果に基づいて、DNAマイクロアレイを用いて、各細胞における遺伝子発現を網羅的に調べ、Gタンパク質共役受容体を含む20種類の候補遺伝子を抽出した。これら20種類の候補遺伝子のうち、細胞内移行能と遺伝子発現の相関が低い遺伝子を除外することによって、候補遺伝子を3種類に絞り込むことができた。さらに、ビオチン標識ペプチドとアビジン固相化磁性ビーズを用いたプルダウンアッセイにより、候補分子との相互作用を確認した。候補分子の機能的検証を進めるため、ゲノム編集技術を用いたノックアウト細胞の樹立及び過剰発現細胞の作製を遂行した。 本年度はさらに、研究成果を臨床応用へ発展させるために、細胞内移行能を有する配列に対する抗ウサギ抗体を取得した。当該抗体は細胞内移行を阻害する傾向を示した。 本研究成果は、H5N1の感染性や高病原性の理解に貢献するとともに、世界的大流行が危惧されているにもかかわらず、未だ有効な治療法が確立されていないH5N1感染対策に重要な知見をもたらすことが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は引き続き、「H5N1の新規感染経路の分子機構の解明」に取り組み、前述の研究成果を得た。しかし、受容体候補分子のノックアウトまたは過剰発現実験が難航し、研究遂行に予想以上の時間を要した。本年度の計画であった「新規経路によるH5N1感染と重症肺炎病態との関連」については、検討を進められなかったため、「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も引き続き、「H5N1の新規感染経路の分子機構の解明」を行う。主として、受容体の最終的な同定と同定した受容体のシグナル伝達経路を追究する。また、「新規経路によるH5N1感染時の高病原性機序の解析」、「H5N1の新規感染経路を阻害する分子標的薬の探索」を通じて、H5N1感染の予防や治療のための創薬標的の発見を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までの達成度に記述した通り、本年度に計画していた課題が難航したため、次年度使用額が生じた。具体的には、受容体の最終同定のための細胞作製に想像以上の時間を要し、臨床応用へ発展させるための研究課題をほとんど遂行できなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
生じた次年度使用額については、翌年度中に使用する。 使用目的は、主として交付申請書に記載の通りであり、未解決の研究課題実施のために使用する。 具体的には、分子生物学実験試薬、細胞培養試薬、抗体購入費などの物品費として403,619円を、学会参加や出張のための旅費として100,000円を使用する予定である。
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