研究課題
挑戦的萌芽研究
「認知症防御物質の神経活動依存的な血液脳関門(BBB)輸送機能の解明」を目的として、本年度はヒトBBB in vitroモデル(ヒト脳毛細血管内皮細胞株hCMEC/D3細胞)を用いて、多価不飽和脂肪酸ドコサヘキサエン酸(DHA)のBBB輸送に関わる分子機構を同定した。記憶の形成に重要な役割を果たすDHAの脳内量の低下は、様々な中枢疾患の発症リスクを高めることが報告されている。先行研究における標的タンパク質絶対定量解析から、ヒト単離脳毛細血管においてFatty acid transport protein 1(FATP1)/SLC27A1の発現(J Neurochem 117:333-45, 2011)を見出しており、本研究ではDHA輸送機構としてFATP1の関与に解析の焦点を絞った。FATP1 /HEK293安定発現株における[14C]DHAの輸送活性は、Mock/HEK293細胞に比較し有意に高かった。hCMEC/D3細胞に対する[14C]DHAの取り込みは濃度依存性を示し、FATP1基質の長鎖脂肪酸であるオレイン酸によって阻害された。FATP1 siRNA処理によってhCMEC/D3細胞のFATP1発現を抑制した場合、コントロールと比較して [14C]DHAの取り込み量は有意に減少した。さらに、hCMEC/D3細胞への[14C]DHA取り込みを活性化する一因子の同定に目途が付いた。以上の結果から、ヒト脳毛細血管内皮細胞におけるFATP1輸送機能の賦活化が、認知症防御物質DHAの脳への供給不足を回避するための分子機構となる可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、血液脳関門in vitro輸送評価系を用いて認知症防御物質の輸送特性を解明し、輸送活性化因子の探索に目途が付いた。In vivo輸送評価系を用いた、神経活動活性化と血液脳関門輸送機能との関連性の解析については、次年度も引き続き実施する。
今年度に蓄積した基本的な知見を踏まえ、次年度以降は認知症病態モデルでの解析及びケミカルバイオロジーの方法論を用いた認知症予防物質の輸送実体の解明へと展開することから、連携研究者からの最新情報を積極的に活用することで研究推進を図る。
次年度使用額は、神経活動活性化とin vivo血液脳関門輸送機能との関連性解析に関する今年度の当初計画の一部を、次年度に予定していた輸送実体の解明研究に変更したことにより生じたものである。次年度以降に引き続き実施するin vivo輸送評価に必要な経費として、平成26年度請求額と合わせて使用する予定である。
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