本研究では、共同研究者の升島らが開発した細胞レベルの微小空間から採取した微量サンプル中の化合物をLC-MS/MSにて定量する実験系を用いて、sandwich培養肝細胞における細胞質および胆管腔内の薬物濃度を測定することによって、1細胞レベルでの化合物の胆汁排泄クリアランスを定量化することを目標とした。前年度、胆管腔内の薬物の定量を試みたが、sandwich肝細胞培養系において肝細胞を挟むために重層しているコラーゲンや的リゲルなどのゲル層をプローブが突破するのが困難であったことから、肝細胞においてゲル層の厚みを薄くすることを試みたが、ゲル層が薄くなると、肝細胞間に形成される胆管腔の形成効率が低下することが分かり、本戦略は断念せざるを得なかった。一方で、比較的肝細胞の性質を維持しており、ゲル無しでもある程度の効率で胆管腔を形成するHepaRG細胞を用いて、ロスバスタチンやタウロコール酸などの胆管腔への排出を従来法で測定したところ、肝細胞よりは若干クリアランスが小さいものの、十分胆汁排泄トランスポーターの能力を反映した排出が観察されたことから、今後、HepaRG細胞を用いることで、当初の目的が達成可能となることが確認された。
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