研究課題/領域番号 |
25670076
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中川 晋作 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (70207728)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ワクチン / アジュバント / マイクロニードル |
研究概要 |
マウスの表皮細胞におけるToll様受容体(TLR)の発現プロファイルを解析した結果、ランゲルハンス細胞、ケラチノサイト及び真皮樹状細胞においてTLR4とTLR9の高発現が認められた。そこで次に各種TLRリガンド(TLR-L)とニワトリ卵白アルブミン(OVA)を混合して含有させたマイクロニードルをマウスに貼付しアジュバント活性を評価したところ、MPLAあるいはODN1826を併用した群で、OVA単独免疫群と比較して、顕著な抗体価の上昇が認められた。IgG抗体のサブクラスを解析では、Th2型抗体であるIgG1の抗体価は各群とも高値を示しており顕著な差は認められなかった一方、Th1型抗体であるIgG2b抗体に関しては、MPLA(TLR4のリガンド)あるいはODN1826(TLR9のリガンド)を併用した群で著しい抗体産生の増強が認められた。また粘膜面におけるIgA抗体の誘導について検討した結果、TLR-Lを併用した場合でも経皮免疫ではIgA抗体の産生は認められなかった。さらに最終免疫から2週間後のリンパ組織におけるIFN-γならびにIL-4産生細胞数を解析したところ、MPLAあるいはODN1826を併用した群では、所属リンパ節、脾臓のどちらにおいても、OVA単独免疫群と比較してIFN-γ産生細胞数は2倍以上増加していたのに対し、IL-4産生細胞数は減少していた。またTLR-Lの安全性評価については、TLR-Lを併用した群における紅班はOVA単独群と同様に消失しており、TLR-Lの皮膚刺激性は極めて低いと考えられた。またMPLAおよびODN1826併用群ともに未処理群と同様の体重増加曲線を描くとともに、主要臓器の重量についても顕著な差は認められなかった。さらに、血中の肝臓および腎臓の組織障害マーカーについても異常は認められなかった。 現在、TLR-L刺激した細胞の機能解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度検討予定であった項目については、全て完了しており、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度にマイクロニードルを用いて各種TLR-L(TLR-L1~TLR-L9)の中から絞り込んだ経皮ワクチン用のアジュバント候補物質(MPLAとODN1826)を用い、LC、KCおよびdDC におけるMHC分子や共刺激分子の発現誘導をフローサイトメトリーにより解析する。さらにMPLAとODN1826で刺激した細胞の培養上清を回収し、各種サイトカイン濃度をELISA法により測定する。さらにLCやdDCを欠損させたマウス並びにTLR4或いはTLR9を欠損したマウスを用い、in vivoにてアジュバント候補物質の免疫誘導・免疫増強特性を解析する。これらの結果から、申請者が絞り込んだ経皮ワクチン用アジュバント候補物質による免疫誘導並びに免疫増強の機序を探り、経皮ワクチン用アジュバントとしての可能性を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、経皮ワクチンにおけるアジュバント候補物質を探索するのが目的である為、使用する抗原(OVA)は、アジュバント様物質(特にエンドトキシン)が全く含まれていない抗原を使用しなければならない。このエンドトキシンが含まれていないOVAは、非常に高価であり、これまでは一社からしか販売されていなかった。しかし別の試薬会社が我々の要望により、新たにエンドトキシンを含まないOVAを開発することになり、その試薬会社が新たに開発した試薬をサンプルとして提供して頂いた為、購入する費用を削減することが出来た。さらに購入予定だったTLR-Lの一部を共同研究者から提供して頂いた為、その費用を削減することが出来た。また、昨年度第45回日本小児感染症学会で発表するにあたり、出張費を支出する予定であったが、学会から一部支給されたため、出張費の削減につながった。 今年度の実験計画として、当初予定していた研究計画に加えて今年度新たにTLR4及びTLR9を欠損したマウスでもアジュバント効果を検討することとした。昨年度に使用予定だった約72万円については、この検討を行うための費用として予定している。
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