研究課題/領域番号 |
25670079
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大戸 茂弘 九州大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00223884)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 薬学 / 生体リズム / 体内時計 / 時計遺伝子 / 金属元素 |
研究概要 |
生体には体内時計が存在し、がんをはじめとする様々な病態の日周リズムとの関連性が示唆されている。一方、生体内金属は、酵素やタンパク質の構成成分として必須であり生体の恒常性維持に重要な働きをしている。生体内金属の一つである鉄は、酸素運搬やミトコンドリアにおけるエネルギー産生のみならず、DNA 合成に必須なリボヌクレオチド還元酵素をはじめとした、多くの酸化還元酵素の活性に必要な生体に不可欠な金属である。また、がん細胞中では過剰なDNA合成及び細胞増殖のため、鉄代謝機構が亢進しており、がん細胞中における鉄量の調節はがん細胞の増殖において非常に重要である。しかし、この鉄代謝機構と概日時計機構との関連については未解明である。そこで本研究では、colon26腫瘍移植モデルマウスを対象に、がん細胞中の鉄量の日周リズムの存在とその制御機構の解明を目的として、鉄代謝機構関連因子であるIRP2(Iron Regulatory Protein 2)に着目し検討した。 がん組織中における鉄量には、暗期前半に高値を示す有意な日周リズムが認められた。がん組織中において鉄代謝機構に日周リズムがあることが示唆された。そこで、TfR1(Transferrin Receptor 1)を介して、細胞内の鉄量を調節しているIRP2に着目してそのメカニズムを検討した。その結果、IRP2の発現量には鉄量と相関する日周リズムが認められた。また、IRP2による転写後調節により発現量が安定化される、TfR1の発現量にも同様の日周リズムが認められ、TfR1発現の日周リズムにIRP2による安定化が重要であることが明らかとなった。次に、IRP2の日周リズム制御機構を明らかにするためIRP2遺伝子のプロモーター領域を対象としてルシフェラーゼアッセイを行った。その結果、IRP2遺伝子の発現リズムが、時計遺伝子であるBMAL1/CLOCKにより転写レベルで制御されていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
colon26腫瘍移植モデルマウスを対象に、がん細胞中の鉄量の日周リズムが存在することを明らかにした。その機序として、TfR1を介して細胞内の鉄量を調節しているIRP2の発現量およびIRP2による転写後調節により発現量が安定化されるTfR1の発現量の日周リズムが関与していることが明らかとなった。TfR1発現の日周リズムにIRP2による安定化が重要であることが明らかとなった。IRP2遺伝子の発現リズムは、時計遺伝子であるBMAL1/CLOCKにより転写レベルで制御されていることが明らかとなった。その他の金属についても解析を進めており、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年実施した実験に加えて、がん細胞中の鉄代謝機構に及ぼす分子時計の影響を明らかとし、鉄代謝機構を介した細胞増殖に及ぼす分子時計の影響を明らかにする。またこれまでに得られた成果の論文投稿を予定している。
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