抗がん剤排除などの薬剤耐性は、処方した抗がん剤の無力化に直結する、重大な問題である。この抗がん剤排除は、細胞膜に存在する薬剤トランスポーターを介することが知られているが、抗がん剤がどのよう経路でトランスポーターまでたどり着くのか、さらに、抗がん剤単独でトランスポーターまで運ばれるのかといった謎に対しては、ほとんど分かっていない。 本研究課題では、オートファジーによって、核に蓄積した抗がん剤ドキソルビシンが細胞質に排出されリソソームに隔離される分子メカニズムを明らかにすることによって、薬剤排除による耐性機構を解明することを目指している。本研究による、オートファゴソームマーカーであるGFP-LC3のライブ解析やAtg5やAtg14などのオートファジー制御因子のノックダウン細胞を用いた細胞生物学的解析から、核に蓄積したドキソルビシンの細胞質への排出にオートファジーが関わることを明らかにした。そこで、核から排出される際の核の構造を形態学的に解析し、オートファジー制御因子のノックダウンによって核の構造がどう影響するのかを解析した。その結果、ドキソルビシン排出時に核膜が内側に管が陥入した構造が認められ、ノックダウンによって、管構造の異常が観察された。管形成とオートファジーの関係が明らかになってきた。本研究で明らかとなったオートファジーによるドキソルビシン排除機構は、単に抗がん剤を酸性化区画であるリソソームに隔離して無力化するシステムであるだけでなく、核内の物質の排除に細胞質側から積極的に関与する新規のシステムの存在が明らかとなった。
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