生化学分子生物学のin vitro研究で様々なシグナルカスケードが提唱されている。そのカスケードが実際の細胞の中でどのように起こっているか(どういう時間でどのように拡がっていくか)を知ることができれば、大変素晴らしいことであり、それは”in vivo biochemistry”と呼べるだろう。我々は、これを実現するための試みとして、光遺伝学による光スイッチとFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)法を組み合わせて、カスケードの一部を刺激し、下流シグナルの変化を時間空間的に観察する方法の確立を目指すことが本研究の目標であった。光感受性人工分子はRac1、CDC42などで作られている。 (1)我々はPI3Kの光スイッチを用いた動態研究を推進し、これらがアクチンによって制御され、おそらくRac1やCDC42といったRhoファミリーG蛋白の機能とも関わっていると考えている。 (2)まずRac1、CDC42のtargetであるアクチンフィラメントの動態を調べるため、Life-act mCherryを用いた。これは、感度がよく赤色光で明るいので理想的なマーカーであり、Rac1、CDC42とアクチン間のシグナル伝達について調べるためのシステムができた。 (3)さらに光スイッチについても当初CloverとmRubyのペアでのFRETを目指していたが、mRubyとY-petの組み合わせがより良いことが分かった。その結果、Rac1、CDC42の細胞内機能について多くの新しい知見が得られた。
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