研究課題/領域番号 |
25670089
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
川岸 将彦 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60323606)
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研究分担者 |
寺田 純雄 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00262022)
齊藤 健太 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60374659)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 非線型ラマン分光 / 顕微鏡技術 |
研究実績の概要 |
1. 成果の内容: 前年度に選び出した、生物組織内での測定に適した候補の分子群について、生物組織内でのラマン分光信号を測定した。測定には、連携研究者の東京農工大学三沢和彦研究室が開発中の、コヒーレント反ストークスラマン(CARS)を利用した位相制御コヒーレントラマン顕微鏡のプロトタイプ機を援用した。薬剤の測定のモデルケースとして、タウリンを使った。CARS測定を行うと、水溶液で、波数約1000 cm-1の信号を観測でき、濃度は3 mM程度まで検出できた。このタウリンを生物組織中で測定する事を目指し、mouseより採取した角膜組織を、タウリン溶液に浸漬し、それをモデルとした。CARS測定をしてみると、角膜の内部からタウリンの信号を検出でき、更に、z軸(光軸)方向の濃度プロファイルも測定する事が出来た。 CARS顕微鏡は、新しい測定技術なので、従来の従来の定量法との比較も必要である。そこで、凍結、薄切、乾燥した角膜試料で、フーリエ変換赤外分光(FT-IR)顕微鏡を用いてタウリンを定量し、それをCARS測定と比較してみた。その結果、CARS顕微鏡とFT-IR顕微鏡とで、ほぼ同様の濃度プロファイルを得られた。 2. 意義、重要性: CARS法はFT-IR法と同等に、生物組織内で、物質濃度の分布を測定するのに使える事が確認できた。また、FT-IR法では組織の薄切、乾燥が必要だったのに対し(赤外では特にz軸方向の解像度が低く、また、赤外は水に吸収されるため)、CARSでは湿潤な試料を、薄切せずにそのまま観察する事が出来た。この特徴は、生きた組織内での小分子の分布を測定する上で、有用であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までのところ、平成26年度の実施計画のうち、生物組織での観測については、想定どおりに達成できたと考えている。しかし、候補化学物質を、生物組織内で測定した場合の信号/ノイズ比が、予想したよりも高く、その為に、期待した濃度よりも高い濃度での測定しか、達成できていない。そのため、画像の質は、想定していたよりもやや低いものにとどまり、応用の範囲が未だ広げられていないという点で、"やや遅れている"と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の実施計画に従い、平成25年度の探索で選び、平成26年に測定を進めたタウリンその他の物質について、生物組織内でのラマン分光信号の画像化を継続する。 生物組織での測定の信号/ノイズ比が当初の想定よりも高いので、ノイズの少なめな対象分子、組織の選択を試みる。また、東京農工大学の連携研究者と協力し、プロトタイプ機の改造、改善を通じたノイズの低減も行う。 画像化が実現出来れば、対象物質の種類に応じて、異なる組織、細胞での物質の分布、吸収や浸透の過程も観察したい。また、対象物質の分布と、従来の各種染色法、螢光蛋白や螢光抗体の比較を行い、それを通して、対象物質の分布する場所、構造の同定もしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の実施の都合により、観測装置の組み上げ、拡張の一部を翌年度初めに延期したことから、設備備品等の購入を翌年度に繰り越したため。
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次年度使用額の使用計画 |
装置のくみ上げとセットアップを早急に実施する。除振台など、ある程度高額の物品を購入する予定なので、翌年度分と合わせて使用する。
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