研究課題
慢性ストレス負荷による疼痛発症の仕組みを解明するために3つの異なる慢性ストレスモデルを用いて検討した。慢性疲労モデルと考えられているLow Water Level Stage (LWS)動物モデル、線維筋痛症モデルとして知られるRepetitive Cold Stress (RCS)動物モデル、レゼルピンによる線維筋痛症動物モデル、の3つのモデルを用いて、疼痛の発生を検討した。LWSモデルでは5日間の慢性ストレス負荷によりアロディニアや筋の圧痛が生じた。また、RCSモデルにおいてもアロディニアや筋の圧痛が認められた。さらにレゼルピンを投与するモデルにおいても慢性的な疼痛が生じた。これらのいずれのモデル動物でも末梢組織の炎症や神経の物理的損傷は認めらない。しかし、これらの動物には全て病的な疼痛が生じている。そこで脊髄を観察した所、いずれのモデル動物においても脊髄後角に活性化したミクログリアの集積が認められた。このことは、ストレスの負荷方法によらず慢性的なストレスが、脊髄のミクログリア活性化につながっていることを示す。慢性ストレス下でのミクログリア活性化の原因を明らかにするために、LWSモデルラットを用いて解析を進めた。ミクログリアの活性化をミノサイクリンで抑制すると疼痛を抑制することが出来た。このことから脊髄のミクログリアが疼痛の原因であると結論づけられた。また、その慢性疲労モデルでは固有感覚の過剰慢性刺激が引金になって脊髄後角のミクログリアが活性化している可能性が示唆された。固有感覚神経が損傷まで至らない過剰な興奮により、損傷閾値を越えない過活動が生じることが一つの原因となっている可能性が見えてきた。この他に、下降性疼痛抑制系の異常や交感神経の関与による、脊髄後角でのミクログリアの活性化が示唆されたが、さらなる解析が必要である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Pain
巻: 156 ページ: 415-27
10.1097/01.j.pain.0000460334.49525.5e
J Pharmacol Sci
巻: 126 ページ: 172-176
org/10.1254/jphs.14143SC
Glia
巻: 62 ページ: 1407-1417
10.1002/glia.22687